みなさんこんにちは。翻訳班Sです。いよいよ待ちに待った7月! エリー・グリフィス『見知らぬ人』The Stranger Diariesをお届けできることになりました!!
4月にオンラインで開催した「東京創元社 新刊ラインナップ説明会2021」で、翻訳者の上條ひろみ先生による本書の紹介のときから、ワクワクしてくださっていた方も多いのではないでしょうか。今回は、7月21日ごろ発売の本についてさらにご紹介いたします!

本書は、英国推理作家協会(CWA)賞受賞のベテラン作家が満を持して発表し、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞受賞に至った傑作ミステリです。まずはあらすじを……。

これは怪奇短編小説の見立て殺人なのか? 
――タルガース校の旧館は、かつてヴィクトリア朝時代の伝説的作家ホランドの邸宅だった。クレアは同校の英語教師をしながらホランドを研究しているが、ある日クレアの親友である同僚が殺害されてしまう。遺体のそばには“地獄はからだ”と書かれた謎のメモが。それはホランドの短編に登場する文章で……。

本書の著者エリー・グリフィスはイギリス出身の作家で、法医考古学者ルース・ギャロウェイ・シリーズと、エドガー・スティーヴンス警部と戦友マックス・メフィストのミステリ・シリーズで名声を得ました。図書館員によって選ばれ、作品ではなく作家に対して与えられるCWA賞図書館賞を受賞しているベテラン作家で、本書『見知らぬ人』は、単発作品として刊行されました(その後、人気が出てシリーズ化されました)。

『見知らぬ人』様々な魅力のある作品ですが、なんと言っても殺人事件の犯人がわかった時の驚きがすごい!! 本の帯のキャッチコピーに「この犯人は、見抜けない。」というちょっと挑戦的なものを書いてしまったくらい、意外性があると思います。手がかりはきちんと伏線として提示されていたのに、慎重に読んでも真相が見抜けない……これぞ、ミステリを読む醍醐味をじっくり味わえる作品だと思います!

そして第二に、作中作「見知らぬ人」という怪奇小説がとてつもなく魅力的であり、作中に「本」に対する深い愛情が感じられることです。
作中作の「見知らぬ人」はヴィクトリア朝時代の作家ホランド(架空の著者です)による怪奇短編で、冒頭から少しずつ少しずつ物語に挿入され、不気味な存在感を発揮しています。そして作中で起こる殺人事件で、遺体のそばにこの「見知らぬ人」の文章の一部を書いたメモが残されていました。いったい、犯人はどんな意図があってそのような行為をしたのか……。謎が謎を呼び、ページをめくる手が止まらなくなっていきます。
この作中作の巧みさのみならず、『見知らぬ人』本編にはたくさんの本のタイトルが登場して、本好きの心をくすぐってきます。シェイクスピアなど古典作品だけでなく、〈ハリー・ポッター〉シリーズやポーラ・ホーキンズの大ベストセラー・サスペンス『ガール・オン・ザ・トレイン』などなど、さまざまな作品が登場します。そして意外な効果を発揮していたりして……。

物語の主な舞台がタルガース校という学校の旧館であることも魅力的だと思います。この建物はかつて作家ホランドの邸宅で、不気味な怪談も発生するくらいには雰囲気たっぷりのお屋敷です。英国ミステリがお好きな方、ヴィクトリア朝時代がお好きな方にも楽しんでいただけると思います。
文庫のカバー装画はイラストレーターのチカツタケオさんにお願いしまして、素晴らしい作品を描いていただきました! イギリスらしい煉瓦づくりの館と不穏さを感じる空から、ゴシックな雰囲気が溢れ出ていますね。何度見てもうっとりしてしまいます……。そして、チカツさんに装画をお願いすることを提案してくださったデザイナーの鈴木久美さんの力で、さらに魅力たっぷりのカバーになりました! このタイトル文字のあしらい……大好きです!! 文字の黄色や帯の青がとても目を引くので、書店で平積みになっているところを見たい! とずっとワクワクしております。

まだまだ魅力を語り尽くせない作品なのですが、まずはこのあたりで……。読み終わった後には、ぜひ大矢博子さんによる解説を読んでいただくと、さらに新たな視点で本書を読み返したくなること間違いなしです。本当に素晴らしい解説を頂戴しました!! 最後のページまで、じっくり味わっていただけますと幸いです。 

エリー・グリフィス『見知らぬ人』は7月21日ごろ発売です(発売日は地域・書店によって前後する場合がございます)。2021年海外ミステリ最高の注目作を、どうぞお手に取っていただけますと嬉しいです!

(東京創元社S)

◇編集部より

高難度の「犯人当て」を求める読者にとって、これほど贅沢な贈り物があるだろうか。手掛かりはこれ以上なくフェアに、むしろあからさまに提示されるのに、慎重に読めば読むほど真相から遠ざかってしまう。(編集部RF)

作中作で背筋を凍らせ、雰囲気たっぷりの学校で起こる事件にどきどきし、そしてあのラスト!! あんな驚きが待っていたなんて。(編集部KK)