「21世紀の『そして誰もいなくなった』」として大反響を呼んだ、第26回鮎川哲也賞受賞作『ジェリーフィッシュは凍らない』。現実のアメリカとよく似たパラレルワールドのU国を舞台に、フラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣が不可能犯罪に挑む人気シリーズ第4弾は、初の短編集をお届けします!
U国A州の空軍基地にある『飛行機の墓場(ボーンヤード)』で、兵士の変死体が発見されました。謎めいた死の状況、浮かび上がる軍用機部品の横流し疑惑。空軍少佐のジョンは、士官候補生時代のある心残りから、フラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣へ非公式に事件解決への協力を依頼します。実は引き受けたマリアたちの胸中にも、それぞれの過去――若き日に対峙した事件への、苦い後悔があったのでした。
空軍基地での変死事件を描いた表題作「ボーンヤードは語らない」を皮切りに、本作では主要キャラであるマリア、漣、ジョンの過去が明かされていきます。
高校生の漣が遭遇した、雪密室の殺人(「赤鉛筆は要らない」)。ハイスクール時代のマリアが挑んだ、雨の夜の墜落事件の謎(「レッドデビルは知らない」)。そして、過去の後悔から刑事となったマリアと漣がバディを組んだ、“始まりの事件”とは?(「スケープシープは笑わない」)。
どの短編も不可解な状況下の犯罪を描いており、ロジカルに謎が解かれていく本格ミステリとしての面白さは、短編でも健在です。そして、マリアたちの過去が初めて明かされることで、「なぜ警察官を選んだのか」が分かり、胸が締め付けられます。過去の後悔を踏まえた上で、今度こそ傷ついた誰かを救えるよう、プライドをかけて己の仕事に励む、彼女たちの奮闘も見逃せません。
影山徹さんによる静謐な『飛行機の墓場(ボーンヤード)』を描いたイラスト&鈴木久美さんによる格好良いデザインの、カバーが目印です。シリーズ読者も、本書から初めて手に取る読者も楽しめる、そんな『ボーンヤードは語らない』を、ぜひお楽しみ下さい!