カナリア諸島から北へ十二海里。太陽は高く、風が帆をぐいぐい押している。
七名から成るクルーは、年齢は十四から十六まで。そこにまだ若い一等航海士と船長が加わっていた。
航海は順調だった。スコールが来るまでは……。
風が猛威をふるい、波が大きく盛り上がってはくずれていく。小さなヨットは波にもまれ、水が入り込み、少年たちは救命ボートに乗り移った。
だが少年のひとりビルはボートに乗りそびれ、荒れ狂う波のなか必死で残っていた手漕ぎボートに食糧や水を積み込み、沈んでいくヨットから命からがら逃れる。
(このあたりの描写は、読んでいて船酔いするほどの迫力です。絶対船になんか乗るまいと、編集者は決意を新たにしました!)
命は助かったものの、ビルは大海原にたったひとりになってしまった。
漂流して三日目、ビルはプラスチックの樽が流れてくるのを発見した。驚いたことに、樽の上には気を失った少女が乗っていたのだ。少女が生きていることに気づいたビルは、必死でボートに移し、介抱した。
少女の名はアーヤ。ベルベル人(アマジグ、北アフリカの先住民族)で、フランス語と少しばかりの英語を話した。少年と少女は、たどたどしいながらコミュニケーションをとり、互いを理解していく。
二人の乗る小さな舟はあてどなく海原をさまよい、ビルがヨットから積み込んだ食糧も次第に底を尽きてくる。
そんななか、アーヤはビルに物語を語った。『千一夜物語』のシェヘラザードのように。
七名から成るクルーは、年齢は十四から十六まで。そこにまだ若い一等航海士と船長が加わっていた。
航海は順調だった。スコールが来るまでは……。
風が猛威をふるい、波が大きく盛り上がってはくずれていく。小さなヨットは波にもまれ、水が入り込み、少年たちは救命ボートに乗り移った。
だが少年のひとりビルはボートに乗りそびれ、荒れ狂う波のなか必死で残っていた手漕ぎボートに食糧や水を積み込み、沈んでいくヨットから命からがら逃れる。
(このあたりの描写は、読んでいて船酔いするほどの迫力です。絶対船になんか乗るまいと、編集者は決意を新たにしました!)
命は助かったものの、ビルは大海原にたったひとりになってしまった。
漂流して三日目、ビルはプラスチックの樽が流れてくるのを発見した。驚いたことに、樽の上には気を失った少女が乗っていたのだ。少女が生きていることに気づいたビルは、必死でボートに移し、介抱した。
少女の名はアーヤ。ベルベル人(アマジグ、北アフリカの先住民族)で、フランス語と少しばかりの英語を話した。少年と少女は、たどたどしいながらコミュニケーションをとり、互いを理解していく。
二人の乗る小さな舟はあてどなく海原をさまよい、ビルがヨットから積み込んだ食糧も次第に底を尽きてくる。
そんななか、アーヤはビルに物語を語った。『千一夜物語』のシェヘラザードのように。
「お話は大事なの。食べものと水が大事なように」
アーヤの語る「シェヘラザードの物語」「光どろぼう」「影の戦士」「シェヘラザードの語る最後の物語」は、ビルにわずかでも辛い状況を忘れさせてくれた。
(アーヤが語る物語は、とても素敵です。ビルになった気持ちでワクワクしながら読みました!)
だが漂流する少年と少女に容赦なく襲いかかる死の恐怖。極限状態におかれた二人の運命は……
カーネギー賞の最終候補作になった感動の大作。
アーヤの語る「シェヘラザードの物語」「光どろぼう」「影の戦士」「シェヘラザードの語る最後の物語」は、ビルにわずかでも辛い状況を忘れさせてくれた。
(アーヤが語る物語は、とても素敵です。ビルになった気持ちでワクワクしながら読みました!)
だが漂流する少年と少女に容赦なく襲いかかる死の恐怖。極限状態におかれた二人の運命は……
カーネギー賞の最終候補作になった感動の大作。