ハムレット、ホームズ、ドラキュラ。
登場人物が実体化して図書館に住んでいたら……?
不思議な図書館で起きたある事件を描く
MWA賞&アンソニー賞最優秀短編賞受賞作ほか、
本や物語をテーマとする4編を収録!
登場人物が実体化して図書館に住んでいたら……?
不思議な図書館で起きたある事件を描く
MWA賞&アンソニー賞最優秀短編賞受賞作ほか、
本や物語をテーマとする4編を収録!
みなさまこんにちは。今回はジョン・コナリーの『キャクストン私設図書館』についてのご紹介です。著者は3月に創元推理文庫に入った『失われたものたちの本』で全米図書館協会アレックス賞を受賞、本書収録の「キャクストン私設図書館」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞とアンソニー賞の最優秀短編賞をダブル受賞したベテラン作家です!
『キャクストン私設図書館』は、短編集Night Music: Nocturnes Volume 2から、本や物語をテーマにしている4編を抜粋したものです。
表題作の「キャクストン私設図書館」は、短編というよりノヴェラ(中編)というほうが適切な長さになっており、非常に読み応えのある作品です。人々に広く知れ渡ったがゆえに実体化した物語の登場人物たちが住むという私設図書館が舞台という、なんとも魅力的な設定なのです! ハムレット、ホームズ、アンナ・カレーニナ、オリヴァー・ツイスト……。さまざまなキャラクターたちがひとつの図書館に住んでいるのです。
わたしたちは本を読み終わって閉じたあと、登場人物たちの“その後”がどうなっているのか、想像することがありますよね? 本書はそんな読者の声を拾ったかのように、小説の主人公が実体化して暮らしている様子が描かれています。そして、図書館を発見した読書好きのバージャー氏が起こしてしまった、とんでもない事件の顛末とは?
この短編を読んで、個人的に考えたのは「物語は誰のものか?」ということです。著者のものか? 読者のものか? もちろん、最初に作品を生み出したのは著者です。しかし、物語は読む人によって姿を変えるものでもあるのかもしれません。例えば、歴史上の人物は、フィクションに描かれることで「こういう性格なのか」と広く人々に認識されることもあると思います。そういう、「書くこと」「読むこと」について考えるきっかけにもなるたいへん面白い作品だと感じました。
また、「キャクストン私設図書館」と同じ図書館が舞台の「ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事」は、同図書館のなかでも「もっとも不可思議なできごとのひとつ」と言われる、かの名探偵シャーロック・ホームズを中心にした作品です。ホームズとワトスンが実体化したがゆえに、図書館自体を滅ぼしてしまうのではないかとまで思われた恐るべきできごととは……? 著者のコナリーはホームズをテーマにしたアンソロジーにも寄稿しており、この作品もホームズへの複雑な愛情が感じられます。
「虚ろな王(『失われたものたちの本』の世界から)」という掌編は、タイトルのとおり『失われたものたちの本』の世界観で綴られたおとぎ話です。『失われたものたちの本』は12歳の少年が異世界を旅するダーク・ファンタジーですが、本書では主人公ではなく、重要な登場人物のひとりの物語が描かれます。短い作品であるにもかかわらず、著者のシニカルでダークな魅力が凝縮されています。結末の凄さに圧倒されました。独立したお話ですので、こちらをきっかけに『失われたものたちの本』も読んでいただければと思います。
こちらも短編というよりノヴェラという長さの「裂かれた地図書――五つの断片」には、ブラム・ストーカー賞も受賞している怪奇小説作家としての著者の真骨頂が発揮されています。『裂かれた地図書』と呼ばれる奇書をめぐる物語で、“五つの断片”とあるとおり、さまざまな時代に登場する奇書のまわりにおこる怪奇現象やそれに翻弄される人々を描いています。背筋が凍り付くようなぞっとするような作品ですが、先が気になってページをめくる手が止まりません。ものすごーく怖いです!!! そして何が真実なのかわからない、「混沌」を描いた作品であるかもしれません。こちらのラストシーンも強烈なので、ぜひ読書会などでこの結末について話し合ってもらいたいです。
収録作すべてが物語の魅力にあふれており、本が好きな方、図書館が好きな方にぜひ手に取っていただきたい作品集です。装画・装幀もとっっても素敵です!
装画は齋藤州一さんにお願いしまして、ちょっと不思議な物語の登場人物たちを描いていただきました。ほんの裏側まで続く大迫力の絵で、帯下も、見ると「おお!」と驚かれると思います。まさに本書のイメージにぴったりの作品を描いていただきました!
すてきなカバー装画を見事に引き立てる装幀を手掛けてくださったのは、藤田知子さんです。シンプルで格好いいカバーや表紙、扉のデザインはもちろん、選んでくださった紙がとてもいいのです! 単行本ならではの楽しみですね。特に表紙の紙が好きです〜。素晴らしいお仕事をしてくださったおふたりに感謝です。
なかなか気忙しい毎日ですが、本書を読めば非日常の世界に没頭する楽しみをじっくり味わっていただけると思います。お楽しみいただけますと幸いです。
【海外書評より】
「MWA賞とアンソニー賞の最優秀短編賞を受賞した、このとてつもなく魅力的な「キャクストン私設図書館」に、本を愛する者は文学の奇跡という秘密の世界を見いだす」――〈アイリッシュ・タイムズ〉紙
「必読」――〈ブックリスト〉
「洞察力に富み、かつ非常に面白い」――〈Tzer Island〉
『キャクストン私設図書館』は、短編集Night Music: Nocturnes Volume 2から、本や物語をテーマにしている4編を抜粋したものです。
表題作の「キャクストン私設図書館」は、短編というよりノヴェラ(中編)というほうが適切な長さになっており、非常に読み応えのある作品です。人々に広く知れ渡ったがゆえに実体化した物語の登場人物たちが住むという私設図書館が舞台という、なんとも魅力的な設定なのです! ハムレット、ホームズ、アンナ・カレーニナ、オリヴァー・ツイスト……。さまざまなキャラクターたちがひとつの図書館に住んでいるのです。
わたしたちは本を読み終わって閉じたあと、登場人物たちの“その後”がどうなっているのか、想像することがありますよね? 本書はそんな読者の声を拾ったかのように、小説の主人公が実体化して暮らしている様子が描かれています。そして、図書館を発見した読書好きのバージャー氏が起こしてしまった、とんでもない事件の顛末とは?
この短編を読んで、個人的に考えたのは「物語は誰のものか?」ということです。著者のものか? 読者のものか? もちろん、最初に作品を生み出したのは著者です。しかし、物語は読む人によって姿を変えるものでもあるのかもしれません。例えば、歴史上の人物は、フィクションに描かれることで「こういう性格なのか」と広く人々に認識されることもあると思います。そういう、「書くこと」「読むこと」について考えるきっかけにもなるたいへん面白い作品だと感じました。
また、「キャクストン私設図書館」と同じ図書館が舞台の「ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事」は、同図書館のなかでも「もっとも不可思議なできごとのひとつ」と言われる、かの名探偵シャーロック・ホームズを中心にした作品です。ホームズとワトスンが実体化したがゆえに、図書館自体を滅ぼしてしまうのではないかとまで思われた恐るべきできごととは……? 著者のコナリーはホームズをテーマにしたアンソロジーにも寄稿しており、この作品もホームズへの複雑な愛情が感じられます。
「虚ろな王(『失われたものたちの本』の世界から)」という掌編は、タイトルのとおり『失われたものたちの本』の世界観で綴られたおとぎ話です。『失われたものたちの本』は12歳の少年が異世界を旅するダーク・ファンタジーですが、本書では主人公ではなく、重要な登場人物のひとりの物語が描かれます。短い作品であるにもかかわらず、著者のシニカルでダークな魅力が凝縮されています。結末の凄さに圧倒されました。独立したお話ですので、こちらをきっかけに『失われたものたちの本』も読んでいただければと思います。
こちらも短編というよりノヴェラという長さの「裂かれた地図書――五つの断片」には、ブラム・ストーカー賞も受賞している怪奇小説作家としての著者の真骨頂が発揮されています。『裂かれた地図書』と呼ばれる奇書をめぐる物語で、“五つの断片”とあるとおり、さまざまな時代に登場する奇書のまわりにおこる怪奇現象やそれに翻弄される人々を描いています。背筋が凍り付くようなぞっとするような作品ですが、先が気になってページをめくる手が止まりません。ものすごーく怖いです!!! そして何が真実なのかわからない、「混沌」を描いた作品であるかもしれません。こちらのラストシーンも強烈なので、ぜひ読書会などでこの結末について話し合ってもらいたいです。
収録作すべてが物語の魅力にあふれており、本が好きな方、図書館が好きな方にぜひ手に取っていただきたい作品集です。装画・装幀もとっっても素敵です!
装画は齋藤州一さんにお願いしまして、ちょっと不思議な物語の登場人物たちを描いていただきました。ほんの裏側まで続く大迫力の絵で、帯下も、見ると「おお!」と驚かれると思います。まさに本書のイメージにぴったりの作品を描いていただきました!
すてきなカバー装画を見事に引き立てる装幀を手掛けてくださったのは、藤田知子さんです。シンプルで格好いいカバーや表紙、扉のデザインはもちろん、選んでくださった紙がとてもいいのです! 単行本ならではの楽しみですね。特に表紙の紙が好きです〜。素晴らしいお仕事をしてくださったおふたりに感謝です。
なかなか気忙しい毎日ですが、本書を読めば非日常の世界に没頭する楽しみをじっくり味わっていただけると思います。お楽しみいただけますと幸いです。
【海外書評より】
「MWA賞とアンソニー賞の最優秀短編賞を受賞した、このとてつもなく魅力的な「キャクストン私設図書館」に、本を愛する者は文学の奇跡という秘密の世界を見いだす」――〈アイリッシュ・タイムズ〉紙
「必読」――〈ブックリスト〉
「洞察力に富み、かつ非常に面白い」――〈Tzer Island〉