昨年『向日葵を手折る』が話題となった彩坂美月さんの
瑞々しい学園ミステリ『金木犀と彼女の時間』(文庫版)が発売になりました。
高校最後の文化祭当日――。
上原菜月はクラスメイトの天野拓未から告白された直後、
人生三度目のタイムリープに巻き込まれた。
この状態になった菜月は、同じ1時間を5回繰り返し、
最後の出来事が確定事項となる。
つまり菜月はあと5回、拓未に告白されるはずだった。
しかしその一回目、菜月が告白されるより前に
拓未は屋上から転落死してしまう。
同じ1時間が繰り返されるはずなのに、いったい何が起きたのか?
菜月は残り4回のタイムリープのなかで
拓未が助かる未来をつかもうと奔走するが……。
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筒井康隆さん『時をかける少女』、西澤保彦さん『七回死んだ男』、
高畑京一郞さん『タイム・リープ あしたはきのう』、
北村薫さん〈時と人〉三部作(『スキップ』『ターン』『リセット』)
新城カズマさん『サマー/タイム/トラベラー』など、
青春小説と時間SFの要素はひじょうに相性のいいものです。
同じ時間を繰り返す、過去・未来に跳ぶ、時間によって分断される――
自分ではどうしようもない“時間の力”が、十代の登場人物たちのひたむきさ、切実さを際立たせるからかもしれません。
そんな作品がお好きな方に全力でおすすめしたいのが本作『金木犀と彼女の時間』です!
主人公の菜月は、過去2度のタイムリープ経験を経て、他人と深く関わらず、なるべく目立たないように、自分に特別なことが二度と起こらないよう願いながら生きてきました。
しかしそんな願いもむなしく3度目のタイムリープが発生。
「同じことが繰り返されるはずの時間で、殺人事件が起きたのはなぜか?」
という謎に挑むことになります。
恋はもちろんのこと友人関係にも臆病だった菜月が、クラスメイトの死を回避すべく校舎を駆け巡り、周囲を巻き込んでいく姿に胸を打たれる傑作です。
彩坂美月さんは2009年、富士見ヤングミステリー大賞で準入選した『未成年儀式』(文庫化の際に『少女は夏に閉ざされる』と改題)でデビュー。
2012年には『夏の王国で目覚めない』で第12回本格ミステリ大賞候補、2021年には『向日葵を手折る』で第74回日本推理作家協会賞候補となった実力派です。
今年は1月に『サクラオト』(集英社文庫)、4月に『金木犀と彼女の時間』、5月に『柘榴パズル』(文春文庫)と刊行ラッシュ!