【あらすじ】
悲願の完全犯罪を成し遂げるべく、ホテルでの密室殺人を目論む犯人。目の前の扉を閉めれば完全犯罪が完成するというまさにその瞬間、一匹の黒猫が部屋に入り込んでしまった! 予想外の闖入者に焦る犯人だったが、さらに名探偵音野順と推理作家の白瀬白夜がホテルを訪れ……。黒猫に翻弄される犯人を描いた表題作をはじめ、蝋燭だらけの密室殺人事件をめぐって(自称)名探偵琴宮と三千万円を賭けて推理対決をする羽目になってしまう「クローズド・キャンドル」など五つの短編を収録。気弱で引きこもりがちな名探偵音野順、第二の事件簿。

こんにちは、新人編集部員のKJです。
今回は単行本が刊行されてから実に12年ぶりの文庫化となる『密室から黒猫を取り出す方法』をご紹介させていただきます!


●密室から黒猫を取り出す方法  ホテルの一室で完全犯罪を目論む犯人。扉を閉めれば密室が完成するまさにその瞬間、黒猫が部屋に入り込んでしまう! さらに、猫探しを依頼された名探偵音野順もホテルにやってきて……。一匹の猫に翻弄される犯人の焦燥を描いた表題作です。
東京創元社は猫派が多く、犬好きな私は音野が猫嫌いと聞いてとても親近感を抱きました。もちろん猫も可愛いのですが……少しだけ怖いです。

●人喰いテレビ  山中の別荘地で上半身が裸で右腕が切断された屍体が発見される。さらに、前夜に被害者がテレビに喰べられるところ見たという目撃証言まであがった。奇妙な状態の屍体、そして目撃証言の真相とは? 
ミステリ的要素が詰まった本作ですが、UFO研究会の登場回でもあります。もしかすると北山先生の作品で一番好きなキャラクターたちかもしれません。3月刊行予定の『天の川の舟乗り』でもUFO研究会が活躍するので、既に読まれた方もぜひ再読を!

●音楽は凶器じゃない  シリーズ第一巻『踊るジョーカー』「見えないダイイング・メッセージ」に登場した笹川蘭が語る、6年前に音楽室で起こった殺人事件。犯人は未だ捕まっておらず、割れた窓から逃走したものと見られているが、消えた凶器や一切盗まれることのなかった楽器など不自然な点も多い……。
優秀な指揮者である兄を持つ音野の音楽に対する複雑な感情が垣間見える一作です。

●停電から夜明けまで  停電した屋敷で父殺しを企む双子の兄弟。その日は来客があり、そのうちの一人が音野順の兄である要であった。要は『踊るジョーカー』収録の「見えないダイイング・メッセージ」でも活躍したように切れ者で、今回も見事な推理を披露する。
解説で青崎先生も書いているように、「停電から夜明けまで」はシリーズにおいて、そして音野順にとって一つの区切りとなったように思えます。ぜひ解説と併せてお読みいただければと思います。

●クローズド・キャンドル  高い塀に囲まれた異人館風の屋敷で、蝋燭だらけの一室で発見された首吊り屍体。現場の状況から自殺と判断された一件だったが、自信満々な(自称)名探偵琴宮が『彼の死は自殺ではなく他殺だ』と云い、勝手に犯人探しを始めてしまう。
さらに密室だらけの殺人事件を巡って音野と琴宮は三千万を賭けて推理対決をする羽目になり……。
またまた愉快なキャラクターが登場しました。音野順(ジェンツーペンギンの別名、オンジュンペンギン)や岩飛警部(イワトビペンギン)、阿照先輩(アデリーペンギン)などペンギンの種類をもじった登場人物が多い本シリーズ。琴宮はキングペンギンでしょうか。
北山先生のサインは個性豊かなペンギンが描かれており、並々ならぬペンギン愛が感じられます。私もペンギンが好きなので、いつかはサインを手に入れたいです……。


以上の5編に加え、青崎有吾先生による素晴らしい解説も収録しております。
3月には12年ぶりのシリーズ最新作『天の川の舟乗り』も刊行予定です。
この機会にぜひ『踊るジョーカー』『密室から黒猫を取り出す方法』をご一読ください!


踊るジョーカー 名探偵音野順の事件簿
北山 猛邦
東京創元社
2014-04-05