そんなに繁盛しているわけでもないのに、一日二十四時間、一年三百六十五日ずっと、なぜか休まず営業している小さな書店。天井の高い店の奥には、てっぺんが見えないほど背の高い本棚がいくつもあって、そこに並んでいるのは、この店だけにしかない謎めいた書名の本ばかり――
作品の舞台となるのは、1969年のサンフランシスコ。当時刊行された実在の本の名前がいくつも登場するのも特徴です(例えばアレン・ギンズバーグの詩集『吠える』やJ・G・バラード『沈んだ世界』、カート・ヴォネガット『スローターハウス5』など……)。主人公となるのは、大学図書館に務める青年エイジャックス・ペナンブラ。ただの図書館員ではなく、世界中からありとあらゆる奇妙で貴重な書物を集めてくるのが仕事の「図書入手職員」で、サンフランシスコを訪れたのもある一冊の本を探してのことでした。「予言の書」だという噂のあるその書籍の手がかりを求め、彼が〈二十四時間書店〉を訪れるところから物語は始まります――
――と、この書影やタイトル、著者名、あるいはあらすじに出てくる単語に見覚えがあり、「おやっ?」と思った読者のかたがいらっしゃるかもしれません。
そう、本書は2012年に刊行されたスローン氏のデビュー作『ペナンブラ氏の24時間書店』(創元推理文庫)の前日譚にあたる作品です。本書の約40年後の物語が『ペナンブラ氏~』で、この二冊は地続きになっています(ついでにいうとパンをめぐる奇想天外なエンタテインメント『ロイスと歌うパン種』も、『ペナンブラ氏の24時間書店』とほぼ同時期のサンフランシスコが舞台で、同一世界でのお話です。こちらもおすすめ)。
そんな風変わりな本屋〈二十四時間書店〉が登場する、本と書店をめぐる物語が、本書『はじまりの24時間書店』Ajax
Penumbra
1969です。ロビン・スローン氏が2013年に発表したこの作品、はじめは電子書籍のみでの販売でしたが、のちに紙の本としても刊行されました。このたび、日本の読者の皆さんにもこうして紙の本ならびに電子書籍としてお届けいたします。装画は人気イラストレーターのスカイエマさん。今回は挿絵も数点、描きおろしていただきました。
作品の舞台となるのは、1969年のサンフランシスコ。当時刊行された実在の本の名前がいくつも登場するのも特徴です(例えばアレン・ギンズバーグの詩集『吠える』やJ・G・バラード『沈んだ世界』、カート・ヴォネガット『スローターハウス5』など……)。主人公となるのは、大学図書館に務める青年エイジャックス・ペナンブラ。ただの図書館員ではなく、世界中からありとあらゆる奇妙で貴重な書物を集めてくるのが仕事の「図書入手職員」で、サンフランシスコを訪れたのもある一冊の本を探してのことでした。「予言の書」だという噂のあるその書籍の手がかりを求め、彼が〈二十四時間書店〉を訪れるところから物語は始まります――
――と、この書影やタイトル、著者名、あるいはあらすじに出てくる単語に見覚えがあり、「おやっ?」と思った読者のかたがいらっしゃるかもしれません。
そう、本書は2012年に刊行されたスローン氏のデビュー作『ペナンブラ氏の24時間書店』(創元推理文庫)の前日譚にあたる作品です。本書の約40年後の物語が『ペナンブラ氏~』で、この二冊は地続きになっています(ついでにいうとパンをめぐる奇想天外なエンタテインメント『ロイスと歌うパン種』も、『ペナンブラ氏の24時間書店』とほぼ同時期のサンフランシスコが舞台で、同一世界でのお話です。こちらもおすすめ)。
では『ペナンブラ氏~』を読んでいないと読めないのかというと、そんなことはありません。作品の刊行順と作品内の時系列順、どちらでも楽しめる造りになっているのでご安心ください。二冊とも読めば、共通する登場人物の言動以外にも、固有名詞やモチーフなど、あちこちにスローン氏が仕掛けた遊び心の数々でニヤリとできるかもしれません。
本書ではある一冊の本をめぐる冒険と、〈二十四時間書店〉誕生秘話が語られますが、〈二十四時間書店〉がかかえている秘密はこれだけではありません。本書を先に読んだかたは、ぜひ『ペナンブラ氏の24時間書店』に進んでいただいて、21世紀を迎え書店の主となったペナンブラ氏が、若い主人公たちと店が秘める最大最強の謎をどのように解いていくか、その一部始終も知っていただければと思います。