囲碁は黒と白の石を碁盤の交点(361か所)に交互に打って、囲った場所(地)の多寡で勝負を決めるゲームである。囲ったところが多い方が勝ちである。最初は隅から打っていくのが常道である。隅は一手か二手で約10目前後を確保できる。
つまり効率が良いのだ。それから辺へと展開していくのだが、攻め、守り、カカリ、シマリ、囲い、打ち込み等々が絡み合って、一局の碁が出来上がってくる。そこで重要なのが石の形である。守るときの形が悪いと弱い石になって攻められる。攻めるときの形にスキがあると無理が効かない。
「一石二鳥」という言葉がある。石を一つ投げて、二羽の鳥を落とすの意から、一つの事をして同時に二つの利益を得ることで、効率の良いことを言う。囲碁でもそのような手が打たれることもある。一石三鳥と言われる「耳赤の一手」(ご存知の方も多いと思うが、18歳の秀策が井上因碩と対局した折に、その一手を観て因碩の耳が赤くなったことに由来する有名な一手である)などはその最たるものだろう。
しかし本書での「石の効率」はそういったものではなくて、却ってしっかりした守りの手とか攻めの手、謂わば形の急所に言及したものである。形が悪いと守ったつもりでも後で侵略されたり殺されたりして、場合によっては一手で何十目の差が出ることがある。
また対面するゲームである囲碁では、相手の技量を値踏みしながら打ち進んで行くという側面もある。変な手を打つとその場では何ともないが、後でその手を咎めてくるということはしばしばである。優勢の碁でも弱点をそのままにしておくと必ず逆転される。
本書の問題を暗記すれば、そういったことが防げる。対局者双方が、本書の問題を知っていれば、より高度な囲碁が打てるようになる。要は石の形だが、それは石の効率でもある。言ってみれば、有段者には常識になるような問題を扱った一冊である。