みなさんこんにちは。東京創元社翻訳ミステリ班Sです。
短編を書かせては随一と言われる巨匠の傑作短編集が越前敏弥先生の新訳によってリニューアル! めでたい!! ということで、今回は12月21日ごろ刊行のフレドリック・ブラウン『真っ白な嘘』をご紹介いたします。
フレドリック・ブラウン(1906-1972)はアメリカ生まれの作家で、新聞社、雑誌社などに勤務のかたわら執筆を開始し、1947年刊行の長編『シカゴ・ブルース』で翌年のMWA最優秀新人賞を受賞。ミステリ、SFジャンルで活躍し、特に奇抜な着想と軽妙な話術で描くショートショートの名手として評価されています。
『真っ白な嘘』は全18編の短編集です。江戸川乱歩編『世界短編傑作集』(現在は『世界推理短編傑作集』としてリニューアル)に入っていたため、旧約版で省かれていた「危ないやつら」も収録しています。まさに新訳版であり、完全版となっているのです。
そして新たな解説を書いてくださったのが、現在全6巻予定で刊行中の『短編ミステリの二百年』の編者、小森収先生です。本書とブラウンの魅力をユーモアのある筆致で解説していただきました。
奇抜な発想と、最後の一文まで結末がわからない予想外の展開、そして文学性の高さなど、本書の魅力はたくさんあります。個人的には、人間の想像力を見事に利用しているところがすごいなと思っています。とにかく「巧み」という言葉が似合う! 短編ミステリの面白さを存分に味わえる、まさに名編ばかりです。
ぜひ目次を見て、気になったタイトルから読んでみてください。どの短編から読まれても結構です。
しかし、あえて申し上げます。巻末の一編、「後ろを見るな」はぜひ最後にお読みください。
なぜかって? それは読んでいただければわかりますが、この短編集を味わい尽くしてから読むべきだと思います、ええ……。
新訳版では、各短編のタイトルもちょこっとだけリニューアル。ひらがなが漢字に変わったりしていますが、その変化もお楽しみいただければ幸いです。
鮮やかな色味が印象的なカバーイラストは、もんくみこさんにお願いしました。謎めいたたくさんのモチーフをスタイリッシュに描いてくださいました。かわいいようで、なにか不穏な感じも……。まさにブラウンらしいテイストです!
そんなイラストを最大限に活かしてくださったのは、ブックデザイナーの藤田知子さんです。おしゃれ感がありつつもクラシックな印象の装幀が素敵です! タイトル文字などの位置がばしっと決まっていて、とてもお気に入りのカバーです!!
最後に、フレドリック・ブラウンの刊行予定についてお知らせを。全4巻の決定版『フレドリック・ブラウンSF短編全集』は、2021年2月に第4巻が刊行となります。ミステリのほうでは、2021年中に短編集『復讐の女神』の新訳版が、同じく越前敏弥先生の翻訳でリニューアル! 絶賛発売中の青春ミステリ長編『シカゴ・ブルース』(高山真由美訳)とあわせてお読みいただければ幸いです。
フレドリック・ブラウン『真っ白な嘘』は12月21日ごろ刊行です。年末年始の読書に最適な一冊かと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!
*おまけ
短編ミステリ好きな方におすすめの2冊です。
まずは新訳で話題になったG・K・チェスタトン『奇商クラブ』(南條竹則訳)。前例のない独創的な商いによって活計を立てていることが入会の条件となっている秘密結社、「奇商クラブ」をめぐる謎とは!? 〈ブラウン神父〉シリーズで名高い巨匠による奇譚6編です。
正統派推理短編や私立探偵小説などバラエティ豊かな9編が集まっているのが、『休日はコーヒーショップで謎解きを』(ロバート・ロプレスティ著、高山真由美編訳)です。これは日本オリジナルの短編集ということで、高山真由美先生が精選した名品ばかりを収録しています。短編の並び順を高山先生とわいわいご相談しながら考えたり、著者に「まえがき」や自作解説「著者よりひとこと」を書いてもらって、楽しい一冊になりました。
ぜひお手に取っていただけますと幸いです!
(東京創元社S)
(東京創元社S)