「あの馬鹿が本因坊に四目置き」という戯れ句がある。普段どうということもない人が名人上手に4子で戦える実力を持っていることを示したものだが、やっかみと賞賛を表したもので、碁打ちの心情を伝えるものだと思う。置石のハンディがあっても、上手に勝つことは大変なことである。上手にかかると巧みにうち回されて、いつの間にか碁にされてしまう。
碁を覚えた頃、碁会所で初段と思しき人に9子置いて、何が何だか分からずに、全滅させられたことがある。初段の人が囲碁の神様のように思えた。その後、その人が5子置いて打つのを観た。自分と同じように石を殺されていた。碁とは難しいものだと思った。深いものだと思った。
今にして分かることだが、アマチュアは守りを苦手とするひとが多い。そのため攻められる立場になるとミスが多くなる。だから自分が攻める立場になることが重要で、石数で優位に立っている序盤でいかに有利に戦うための布陣を築けるかが、勝敗のポイントになるということだ。
本書では、置碁で有利に打つための秘訣を解説した。難解なものではなく少し注意すれば誰でも実戦で使えるものばかりを収録した。これらの秘訣には置碁だけでなく、互先においても通用する重要な考え方も含まれている。
さて、「碁楽選書」には『置碁のバイブル上・下』という置碁に対する黒番の打ち方を解説したものがあり、置碁の白番に焦点を当てた『白を持って置碁を打つ』がある。それに本書『置碁の勝ち方』が加わった。これで置碁は万全といきたいところだが、そうでもないところが囲碁の魅力なのだろう。そんなことを言ってしまっては身も蓋もない話になるが、要は受け身になると、囲碁のみならず旨くいかない。
何はともあれ、本書『置碁の勝ち方』は棋力向上にはうってつけの本である。棋力向上には欠かせない本!