とある深い山奥に、倉持村という村があった。村の大地主である千蔵家は、代々呪物、――つまり呪いによって,存在するだけで周囲になんらかの危害を及ぼす、あるいは不可思議な現象を引き起こす物――を管理し、人々を呪いから守ることを使命とする一族だ。 千蔵家の分家である村の農家に生まれた朱鷺は、五歳のときに本家の養子になった。
 朱鷺には呪いに関わるものを見通すことにできる、千蔵家の血筋に伝わる不思議な力が備わっていたのだ。
 だが、ある事件で千蔵家の血は朱鷺をのぞいて途絶え、千蔵家が管理していた呪物は散逸してしまった。以来、朱鷺は各地に散らばった呪物を集めるために、獣の姿をした兄冬二と共に終わることのない旅を続けているのだ……。

「願いの桜の話って本当だと思う?」秋穂町で駄菓子屋兼骨董店清鈴堂を営む宗助は、馴染みの中学生亜咲美からそう聞かれた。通学路から離れた寂しい場所に一本だけ立つ桜の木、その木に願い事をすると叶うことがあるという。
 奇妙な言い伝えや曰くつきの品物に目がない宗助は、早速その桜を調べ始めた。すると亜佐美の周辺で理由もなく体調を崩した生徒がいることがわかる。嫌な予感を覚えた宗助は、祖父の代からの知り合いで呪物に詳しい少年朱鷺に助けを求めた。
 昔なじみの頼みを断れず、また呪いに関わるものが絡むとあればほうっておけず、清鈴堂にやってきた朱鷺と冬二だったが、そこでわかったのは、件の桜は呪われているが、事の発端となった亜咲美は呪いには関わっていないということだった。
 では、呪いに関わっているのは、誰なのか?
 
 呪物を求めて旅をする少年朱鷺とその兄冬二が遭遇する不思議な出来事を描く、シリーズ第二弾。
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東京創元社の国内ファンタジイ見出 (1)

 高校3年生の少女遠野美弥。とりたてて勉強ができるわけでも、綺麗なわけでもない。何事にも真面目に取り組むのだが、要領が悪いせいか、必死で勉強していてもなかなか成果がでない。自分の目標をしっかり定めている友人たちと比べて、ふがいない自分がつくづく嫌になってる今日このごろだ。。
 そんなある日、クラスメイトの男の子に「遠野、おまえ一昨日、旧校舎に行ったりしてないよな?」と聞かれた。
 聞けば、旧校舎には学校の七不思議のひとつ、呪われた鏡があり、その鏡に姿を映すと鏡の中の自分が抜け出して襲いにくるのだとか。
旧校舎は現在部室などに使われている古い建物で、部活をしていない美弥が立ち入ったことなどない。それにそもそも美弥は鏡を見るのが怖いのだ。
 最初は男子生徒の見間違いだろうくらいに思っていた美弥だったが、その後も行った覚えのないところで美弥を見たという話が続いた。
 そんなある日の夕方、黄昏どきに自宅へと向かっていた美弥の行く手に、自分とそっくりの少女の姿が……
 そんなことがあるはずがないと、頭ではわかっている。見間違いだ、人違いだ。だが、ずっと見るのを怖れていた自分がそこにいる。
 いきなり踵を返し遠ざかるもうひとりの自分を夢中で追った美弥は、階段をふみはずしてしまう。
 そんな彼女を救ったのは、一頭の大型犬とその犬を兄とよぶ不思議な少年朱鷺だった。

 受験を目前の少女周辺で起きる怪現象、呪われた品をあつめる奇妙な少年と犬、『魔導の系譜』のシリーズの著者がおくるシリーズ第一弾。

著者のデビュー作『魔道の系譜』のコミック版はマグコミで絶賛配信中です。
単行本1、2巻も発売中。




魔導の福音 (創元推理文庫)
佐藤 さくら
東京創元社
2017-03-11