先日、「首里の馬」で第163回芥川賞を受賞された高山羽根子さん。
第1回創元SF短編賞の佳作に選出され、短編集『うどん キツネつきの』で書籍デビューののち、「太陽の側の島」で第2回林芙美子賞を受賞、SFから純文学まで幅広く活躍する、いま最も注目を集める書き手のひとりです。
そんな高山さん初の書下ろし長編『暗闇にレンズ』が9月30日、発売となります!
高校生の「わたし」は親友の「彼女」と監視カメラだらけの街を歩き、携帯端末の小さなレンズをかざして世界を切り取る。かつて「わたし」の母や、祖母たちがしてきたのと同じように。その昔から、レンズがうつした世界の一部は、あるときには教育や娯楽のために、またあるときには兵器として戦争や弾圧のために用いられてきた。映画と映像にまつわる壮大な偽史と、時代に翻弄されつつもレンズをのぞき続けた“一族”の物語。
物語は高校生の「わたし」とその友人の「彼女」を軸とした〈現代〉パートと、映像や映画の歴史とそれに携わってきた女性たちの年代記が語られる〈過去〉パートで成り立っています。
じつはこの物語の世界は、いまわたしたちが生きている世界とは少し違った歴史を経てきたようで、〈過去〉パートに出てくる映像や映画のエピソードはどれも少しずつ、時には大胆に、現実とずれていることが分かります。
すべてはレンズ越しに撮られ、編集され、つくられた偽物の世界かもしれない。でもそうじゃないかもしれない……
ある意味では壮大なほら話、嘘だらけの“偽史”であり、でもそこに本当のことがちらっちらっと混ざっている、かもしれません。
ちいさな穴から箱のなかの世界を覗くように、読んでいただけたらと思います。