みなさまこんにちは。翻訳ミステリ班の東京創元社Sでございます。

今年7月に、〈Webミステリーズ!〉で、フレドリック・ブラウンの『シカゴ・ブルース』『まっ白な嘘』『復讐の女神』がどどんと新訳になります! とお伝えいたしました。


ついに第一弾、高山真由美先生による新訳『シカゴ・ブルース』が9月30日に刊行となります!! 



まずはあらすじを……。

シカゴの路地裏で父を殺された18歳のエドは、おじのアンブローズとともに犯人を追うと決めた。移動遊園地(カーニバル)で働く変わり者のおじは刑事とも対等に渡り合い、雲をつかむような事件の手がかりを少しずつ集めていく。エドは父の知られざる過去に触れるが──。少年から大人へと成長する過程を描いた巨匠の名作を、清々しい新訳で贈る。第3回アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。


父親を殺された少年エドの一人称で語られる本書は、ミステリ、SF、ファンタジー作品を多数発表し、奇抜な着想と軽妙な話術で描く短編ミステリの名手として評価されているフレドリック・ブラウンの長編ミステリです。この作品で、第3回アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀新人賞を受賞しました。

もう、主人公エドのがんばりにぐわっと心を揺さぶられる作品で、新訳でますますその気持ちが強まりました。
エドは事件がきっかけで、父親のことをなにも知らなかったことに気がつきます。殺人犯を追って行くうちに、どんどん父親の過去のことがわかってくるのです。父親はもういないのに。そこが切なくて、最後までじんわりきます。
そしてアンブローズおじさんがやっぱりいいんだよなあ。こんなおじさんがいたらいいなと思えるような、すてきなおじさんなのです。作中のふたりの掛け合いがとても楽しくて、ずっと読んでいたくなります。まさに、忘れがたい心に染み入る作品だと思います。

また、新訳版では書評家の杉江松恋さんに解説をご執筆いただいたのですが、これがとにかくすごい!! 本書の魅力についてはもちろん、エドとアンブローズおじさんを描いたシリーズ全体の内容、フレドリック・ブラウンの妻、エリザベス・チャリアー・ブラウンによる回想記から判明したことなど、ブラウンについて今まで知らなかったさまざまなことが紹介されています。すばらしい読みごたえの解説ですので、ぜひご一読いただけますと幸いです。

カバー装画を手がけてくださったのは、イラストレーターの安藤巨樹さんです。どことなく乾いたタッチが好きでずっとお仕事をお願いしたいと思っていた夢が叶いました。シカゴの高架鉄道を見つめるエドを情感たっぷりに描いてくださいました。ブックデザイナーの藤田知子さんによるおしゃれなデザインもすばらしいです。タイトル文字の雰囲気がすてき! とても印象深いカバーに仕上げてくださいました。

翻訳も解説もカバーも生まれ変わった『シカゴ・ブルース』は、9月30日刊行です(発売日は地域・書店によって前後する場合がございます)。
そして12月には、越前敏弥先生による新訳で傑作短編集『真っ白な嘘』を刊行いたします。旧訳では未収録だった1編を原書どおりに収録するほか、タイトルが微妙~に変わる予定です。もちろん、解説やカバーも一新! また詳細は随時お知らせして参ります!! どうぞお楽しみに!


** おまけ **

『シカゴ・ブルース』大好き! 青春ミステリ大好き! という方におすすめしたいのが、バリー賞など3冠に輝いたデビュー作『償いの雪が降る』(アレン・エスケンス著、務台夏子訳)と、巧みな構成が光る謎解きミステリ『誰かが嘘をついている』(カレン・M・マクマナス著、服部京子訳)です。高校生や大学生が主人公で、ミステリ的な面白さはもちろん、痛みがありつつも爽やかな人間ドラマをじっくり味わうことができる2作です。読むと元気になれます! あわせてお楽しみいただけますと幸いです。

(東京創元社S)


償いの雪が降る (創元推理文庫)
アレン・エスケンス
東京創元社
2018-12-20

誰かが嘘をついている (創元推理文庫)
カレン・M・マクマナス
東京創元社
2018-10-21