9月も半ばをすぎ、朝晩は秋の気配が濃くなってきましたが、まだ昼間は三十度を超える日も。とりあえずぎりぎり残暑にひっかかっているところで、この夏の連続企画〈創元推理文庫で夏(残暑)を涼しく〉も最終回です。
掉尾を飾るのは、9月30日刊行の『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』『日本怪奇実話集 亡者会』 。
『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』のほうは、1959年に弊社の世界恐怖小説全集12巻として刊行された『屍衣の花嫁』の文庫化です。前回の第7回でご紹介した、日本における怪奇小説の翻訳の礎を築いた平井呈一編訳の名アンソロジー待望の復活。新たに東雅夫の解説も加わりました。
目 次
Ⅰ
インヴェラレイの竪弾き
鉄の檻の中の男
グレイミスの秘密
ヒントン・アンプナーの幽霊
エプワース牧師館の怪
ある幽霊屋敷の記録
Ⅱ
死神
首のない女
死の谷
女好きな幽霊
若い女優の死
画室の怪
魔のテーブル
貸家の怪
石切場の怪物
呪われたルドルフ
屍衣の花嫁
舵を北西に
鏡中影
夜汽車の女
浮標
Ⅲ
ベル・ウィッチ事件
解説 平井呈一
新版解説 東雅夫
一方同時発売の『日本怪奇実話集 亡者会』 は『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』と対をなす作品として、現代の怪奇小説の名アンソロジスト東雅夫氏が編んだものです。
こちらは名だたる文豪が書いた実話怪談集。
目 次
Ⅰ
冕言 田中貢太郎
怪談短篇集 田中貢太郎
築地の川獺
啞娘
二通の書翰
真赤な帆の帆前船
終電車に乗る妖婆
這って来る紐
長崎の電話
電球にからまる怪異
机の抽斗
料理番と女中の姿
亡者会
とんだ屋の客
月光の下
妖艶倫落実話(抄) 平山蘆江
貞女ぽんた
怪談小文
悲恋政代
角海老の高尾
異郷の玉三郎
吉原丸子の旦那哲学
雨の夜に怪談実演
意見道楽の小光
Ⅱ
日本海に沿うて 小泉八雲/平井呈一訳
海へ(抄) 小泉一雄
荏原中延のころ 小泉 時
如意輪観音の呪い 小泉 凡
米国の幽霊物語 野口米次郎
阿呆由 瀧井孝作
古千屋 芥川龍之介
首くくりの部屋 佐藤春夫
黒猫と女の子 稲垣足穂
Ⅲ
怪談女の輪 泉 鏡花
怪談開けずの間 喜多村緑郎
色の褪めた女 小山内薫
父が招く 岡本綺堂
自分が自分に出会った話 畑 耕一
蒲団 橘 外男
西洋狗張子
― 現代幽霊物語の数々 牧 逸馬
雲散霧消した話 黒沼 健
四谷怪談因縁話 徳川夢声
心霊術 長田幹彦
編者解説 東 雅夫
東西怪奇実話の競演。両方あわせてお読みいただけると、味わいがいっそう深まること請けあいです。
残暑を涼しく……だけではなく、秋の夜長の読書に是非!