この絆が断ち切られても、
彼らは陪審裁判を戦い抜く。
バリー賞ペーパーバック部門最優秀賞など三冠を獲得した、心揺さぶる青春ミステリ『償いの雪が降る』の著者の新作をお贈りいたします!
著者のアレン・エスケンスは25年間にわたって刑事専門の弁護士として働いてきましたが、引退して『償いの雪が降る』で作家デビューを果たしました。大学生のジョーが授業の課題で、30年前の少女暴行殺人で有罪となった末期がんの男にインタビューすることになり、そこから過去の事件の真相を探っていくというこの物語は刊行直後から話題となり、さまざまな書評誌で取り上げられたりベストセラー・ランキングに入りました。
日本でも、ひたむきに真相を追うキャラクターの姿や、男子大学生の一人称で語られる爽やかな作風に魅力を感じてくださった方々のおかげで、めでたく重版へつなげることができました! ありがとうございます!!
そして著者の新たな傑作がこの『たとえ天が墜ちようとも』です。まずはあらすじを……。
高級住宅街で女性が殺害された。刑事マックスは、被害者の夫である弁護士プルイットに疑いをかける。プルイットは、かつて弁護士としてともに働いたボーディに潔白を証明してくれと依頼した。ボーディは引き受けるが、それは親友のマックスとの敵対を意味していた。マックスとボーディは、互いの正義を為すべく陪審裁判に臨む。『償いの雪が降る』の著者が放つ激動の法廷ミステリ。
本書の魅力は、なんといってもその構図です。親友同士の刑事と弁護士が、検察側と弁護側に分かれて対立し、法廷で戦う! とにかくエモーショナルで胸を打ちます。しかもこの刑事と弁護士は、『償いの雪が降る』で主人公のジョーの助けとなったいわゆるヒーロー側の人間なのです。
マックス・ルパートはミネソタ州ミネアポリス市警の有能な刑事。彼は高級住宅街の路上で発見された女性の遺体を相棒のニキと調べ、被害者の夫であるベン・プルイットを容疑者とみなします。プルイットはかつて裁判でマックスを不当に追い詰めるようなことをした、いわば因縁の相手。そして刑事専門弁護士であるプルイットは、かつていっしょの事務所で働き、現在はロースクールの教授をつとめるボーディ・サンデンに自分の潔白を証明してほしいと依頼します。
ボーディ・サンデンは過去に法廷弁護士として働き、数々の裁判で勝利をおさめてきました。しかしある事件がきっかけとなり、弁護士は引退。とはいえ資格はそのままなので、かつての仲間であるプルイットの弁護を引き受け、数年ぶりに法廷へ復帰します。
マックスもボーディも信頼に足る好人物であり、どちらも真摯に事件を追い、真相のために戦います。彼らが出会い、友人として固い絆を結ぶに至ったきっかけの事件や、マックスの妻が亡くなったときの涙がにじむような切ないエピソードも語られます。それゆえ、読みながら「どちらが法廷で勝つのだろう?」と翻弄されることになるのです。もうほんとうに、どっちも応援したい!!! と心の底から叫ぶ羽目になります。
そして先述したように、著者はベテランの刑事弁護士でした。それゆえ本書における、検察官と弁護士のテクニカルな駆け引きのリアリティがものすごい! 裁判というのは、知識や戦略で戦う一種のゲームであることがわかります。このテクニカルさやスキルの面白さが、ミステリとしての意外性や驚きにもきちんと結びついているのがすばらしいです。
刑事による捜査小説とリーガル・サスペンスの面白さ、両方をしっかり味わうことができるのも本書ならではの魅力です。前半のマックスとニキの捜査パートも、すごく面白いんですよ!! 特にわたしは頭の切れるアジア系の女性刑事ニキが大好きです。めちゃめちゃ有能で、マックスとパートナーを組むに至った経緯のエピソードもすてきで、男女コンビの刑事ものとしてもおすすめです!
また、本書は『償いの雪が降る』に出てきたキャラクターのその後がわかるという意味でも、前作が面白かった方にはぜひ手に取っていただきたいです。主人公が違う作品で、いわばスピンオフといえる本作ですが、著者は現在6冊を刊行しており、ジョー、マックス、ボーディの三人と、そのまわりの人々を中心にした物語をつむいでいます。各作品には共通の登場人物がいますが、著者自身、シリーズものとしては捉えていないようです(どこから読んでも大丈夫ですし)。登場人物たちが時間や経験をへて変化していく様を読み取る楽しみがあると思います。
それぞれ単独で読める作品ではありますが、ぜひぜひ『償いの雪が降る』『たとえ天が墜ちようとも』両方あわせてお楽しみいただけますとさいわいです。
『たとえ天が墜ちようとも』は9月23日刊行です(発売日は地域・書店によって前後する場合がございます)。デザイナーの國枝達也さんによる、格好いいカバーが目印! 秋の読書にぴったりですね。
どうぞよろしくお願いいたします!