『鳥籠の家』は、〈銭天堂〉(偕成社)シリーズで子供たちにいまや大人気、〈妖怪の子預かります〉シリーズ(創元推理文庫)で大人にもファンが多い、廣嶋玲子先生のシリーズ外作品です。
 お人形遊びよりも、男の子たちの先頭に立って外で遊ぶのが好きという、明るくて活発な少女茜。そんな彼女が、遠い親戚である金持ちの旧家天鵺家の若君、鷹丸の遊び相手に選ばれた。
 初めて足を踏み入れた天鵺家の屋敷は、古くて巨大で、背後には黒羽ノ森という邪悪な気配の濃い、黒々とした不気味な森が控えていた。
 広大な屋敷には若君の鷹丸以外は、召使いをのぞけば、当主だといういかめしい老人、鷹丸に対しやけによそよそしい態度をとる鷹丸の両親、気が触れているという叔母、鷹丸の乳母の静枝だけ。いや、もうひとり、なぜか鷹丸と静枝と茜にしか見えない雛里という謎の少女もいた。どこからともなくいきなり現れ、ぼろぼろの服装で、一言もしゃべることなく鷹丸の身を守る不思議な少女。人間ではなく若君の守り神だという。

 天鵺家の雰囲気と奇妙なしきたりの数々に、次第に息が詰まりそうになる茜だったが、素直に自分を慕ってくる鷹丸に情が移り、逃げ出せずにいた。
そんなある日、天鵺家の人々が儀式のために家を空け、ひと晩たったひとりで留守番をしていた茜は、黒羽ノ森からの人ならぬものの襲撃にあう……

 と、これ以上書いてしまうとネタバレになってしまいますので、残りは読んでのお楽しみです。
 天鵺家に伝わる奇妙なしきたりも、雛里とよばれる不思議な少女も、みんな一つの目的のためにあったのです。それがわかったとき、戦慄の真実が明らかに。
 和もののホラーならではの膚にまとわりつくような恐怖と、主人公の子供たちの健気さからくるさわやかさが絶妙な逸品、〈銭天堂〉シリーズや〈妖怪の子預かります〉シリーズなどでも垣間見られる著者ならではの怖さがたっぷり、これを読めば熱帯夜も涼しく過ごせるかも!