みなさまこんにちは、国内SF担当のSF班(妹)です。
《Genesis》シリーズは、各作品の扉裏に担当編集者による内容紹介とプロフィール紹介を掲載しています。今年はふだん主に海外SFを担当しているSF班(兄)も編集人として加わり、SF班全員で書かせていただきました。今回は特別に、刊行前にその扉裏紹介をお目にかけたいと思います。
二編目は空木春宵さんの「メタモルフォシスの龍」です。それではどうぞ!
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恋をすることが禁じられた未来。その理由は、恋に破れることで発症する〈病〉が世界中に蔓延したためでした。
〈病〉を発症すると、女性は蛇へ、男性は蛙へと身体が変化していき、最終的には本物の蛇や蛙と寸分違わぬ姿になってしまいます。原因も治療法も不明なこの奇病により世界全体が大混乱に陥り、国家機能は次々と崩壊。人々は〈共同体〉と呼ばれる小規模な都市国家を作り、恋に落ちる可能性のあるあらゆる行為を禁じ、互いに距離を取り合って、閉じこもって暮らすようになっていました。
恋に破れ、共同体を抜け出して〈病〉の発症者たちが集まって暮らす〈街〉へやってきた十六歳のテルミは、偶然出会った半蛇の女性・ルイと一緒に暮らし始めます。テルミはルイの、蛇体化が進行しつつある美しい身体に憧れ、自分も早くそうなりたいと願いますが、実は誰にも話せないある秘密を抱えていたのでした……。
空木春宵さんは、一九八四年、静岡県生まれ。駒澤大学文学部国文学科卒。二〇一一年、平安朝を舞台にした言語SF「繭の見る夢」が第二回創元SF短編賞の佳作となりました。一九年、『ミステリーズ! vol.96』(東京創元社)の怪奇幻想特集にゴシック幻想ホラー「感応グラン=ギニョル」を発表。また同年、書き下ろし時間SFアンソロジー『時を歩く』(創元SF文庫)に古典落語をモチーフにしたSF幽霊譚「終景累ヶ辻」を、『Genesis 白昼夢通信』(東京創元社)に室町時代に実在したとされている遊女・地獄大夫に材をとった「地獄を縫い取る」を発表しました。後者は竹書房刊行のアンソロジー『ベストSF2020』にも選ばれています。
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