ブラウン神父、亜愛一郎といった「一見頼りないが、実は奇妙な事件を鮮やかに解決する、鋭い洞察力を持った名探偵」。そんな大先輩に続く、令和の「とぼけた切れ者」名探偵として登場したのが、エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。ひょうひょうとした昆虫好きの青年ですが、一度事件に遭遇すると、たちまち鋭い推理力を発揮します。
4月に文庫化したデビュー作品集『サーチライトと誘蛾灯』で見事な推理を披露し、大好評を博したエリ沢くんの事件簿第2弾が、いよいよ7月に登場です! 本書『蟬かえる』は、前作よりパワーアップした謎解き&エリ沢くんの魅力を、たっぷりお届けいたします。
まず、謎解きについて。帯に掲載した、法月綸太郎さんの「ホワットダニット(What done it)ってどんなミステリ? その答えは本書を読めばわかります」――という絶賛の言葉通り、ホワッドダニットの面白さを味わえます。
16年前、災害ボランティアの青年が目撃したのは、行方不明の少女の幽霊だったのか? 幽霊目撃譚について、エリ沢くんが意外な真相を語る表題作「蟬かえる」。交差点での交通事故と団地で起きた負傷事件。それらのつながりを解き明かす、第73回日本推理作家協会賞候補作「コマチグモ」。
一見、「この場で何が起こっていたのか?」がまったく分からない、不可思議な事件が5つ起こります。誰も事件の全容が掴めない中、唯一、エリ沢くんが些細な手がかりから驚愕の真実を拾い上げるという、その鮮やかさには目を見張ります。
そして、エリ沢くん自身の魅力。彼が解く事件の真相は、いつだって人間の悲しみや愛おしさを秘めていました。犯人や事件関係者が抱える切実さについて、エリ沢くんは優しい眼差しを忘れません。推理の後、彼が語る言葉のひとつひとつには、胸を打たれます。
今回は、「なぜ彼が、そのような悲しいくらい優しい名探偵になったのか?」を描いた、重要な過去エピソードも収録されており、必見です。エリ沢くんの過去を知った時、彼に対する愛おしさが増すことでしょう。
そんな大注目のミステリーズ!新人賞作家が贈る、絶賛を浴びた『サーチライトと誘蛾灯』に続く、ミステリ連作集第2弾をどうぞお楽しみください(前作に続き、河合真維さんによる格好良いエリ沢くん&幻想的な昆虫たちのカバーが目印)!