みなさんこんにちは。翻訳ミステリ班の東京創元社Sです。
以前から折りにふれて「いよいよ刊行ですよ~」とお知らせしておりましたとおり、6月30日にC・J・ボックス『発火点』が発売となります! 著作が累計1000万部突破、30か国で翻訳されている全米ベストセラー作家の大人気〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉の新作です! 
まず声を大にしていいたいのは、

シリーズの途中とはいえ、この『発火点』から読んでも大丈夫ですよー! 

ということです。

むしろこの作品から創元推理文庫に入りましたし、来年の初夏に次作Stone Coldも刊行いたしますので、ぜひここからシリーズを読みはじめて、毎年新作を楽しみにする熱いファンになっていただければうれしいです!

いままで本シリーズを読んだことがない方へご紹介いたしますと、〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉は講談社文庫さんでシリーズ12作目『鷹の王』まで刊行されていました(うち2作目の『逃亡者の峡谷』は電子書籍オリジナル)。現在、シリーズはすべて電子書籍化されており、刊行が最近のものは紙の本で残っています。本作『発火点』から、創元推理文庫にお引っ越しすることになりました。

さて、〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉はどういうシリーズなのでしょうか? まず「猟区管理官」ってなに? という方へご説明を。

猟区管理官は日本ではあまり馴染みがありませんが、広大な自然の広がる担当地区を一人で受け持ち、馬やピックアップ・トラック、ときには徒歩で動き回って野生生物を保護・管理しています。密猟者を逮捕する権限を有しており、ほぼ全員が武装している密猟者などを相手に、ときには危険な任務をこなすユニークな法執行官です。

猟区管理官ジョー・ピケットが遭遇したり巻き込まれたりする事件は、ミステリの主役になることが多い刑事や探偵とはまたちがった魅力があります。そして本シリーズを読むと、サスペンスや謎解きの面白さも充分に味わうことができます。

そしてなんといってもすごいのが、とにかく大自然を舞台にした緊迫感のあるアクションの連続!! 
本シリーズをすべて翻訳されている野口百合子先生の訳者あとがきにこんな一文があります。

臨場感のあるアクションと自然描写で、いまC・J・ボックスの右に出る者はいない。

まさに! ジョーには、山岳地帯や丘陵が広がるワイオミング州の大自然がもたらす危機や、危険な犯罪者たちとの戦いが降りかかります。それがもうとにかく面白い!! 「手に汗握る」というのはこのことかー! と心のなかでつぶやきつつ、先が読めない展開にハラハラして、夢中になってページをめくること間違いなしです。

また、御訳文の魅力でもあると思いますが、このワイオミング州の大自然描写というのがすごく印象的です。とてつもない力をもっている「自然」という脅威がしっかり描かれ、しかしそれゆえに美しいのだなとしみじみ実感できます。著者の野生動物などへの愛情もしっかり伝わってくるのもいいなと思います。

さて、次に「ジョー・ピケット」とは? について。ジョー・ピケットは本シリーズの主人公で、猟区管理官という仕事に誇りと愛着を持っている仕事人であり、愛妻家で三人の娘を持つ子煩悩な家庭人でもあります。このシリーズは通して読むと、ピケット家のファミリー・サーガとしての面白さを充分に感じられると思います。

このジョーがね、とにかくいいキャラクターなんですよ。なんというか、頑固で不器用だなという感じがいいです。誠実で有能な猟区管理官なのに、どこか放っておけない魅力があるというか。素直に応援したくなる好ましい人物です。このジョーのキャラクターが、長年たくさんの読者のみなさんを魅了してきたのではと思います。

ジョーの好きなところはいろいろあるのですが、個人的には拳銃での射撃が下手、というところが萌えポイントです。シリーズ1巻目の『沈黙の森』から下手って書いてある! 子どものときからハンティングに親しんでいるため、猟鳥やクレーの標的が相手ならすぐれた腕を発揮できるらしいのですが、そのぶん人間を狙って撃つ拳銃が嫌で、違和感があるという理由のようです。そういうジョーという人間にぐっときませんか? わたしだけ?

あとはジョーだけでなく妻のメアリーベスや、個性豊かな娘さんたち、ワイオミング州のルーロン知事などなど、いいキャラクターがたくさんいます。そしてなんと言ってもジョーの盟友である鷹匠のネイト・ロマノウスキの格好良さがたまらんですね!! 

ていうかいま気がつきましたが「盟友」ってものすごく格好いいな……。「かたい約束を結んだ友。同志」(大辞泉)ですよ。これ、講談社文庫さんの登場人物表の記述をそのまま使わせていただいたんですが、まさにジョーとネイトの絆を表すのにぴったりかと。ネイトが活躍するスピンオフ的な『鷹の王』もめちゃめちゃ面白いので、ぜひ『発火点』といっしょに読んでくださいね。

すみません、どんどん長くなってしまって肝心の『発火点』のあらすじを書いていなかった……。こんなお話です。

猟区管理官ジョー・ピケットの知人、ブッチの所有地から2人の男の射殺体が発見された。殺されたのは合衆国環境保護局の特別捜査官で、ブッチは同局から不可解で冷酷な仕打ちを受けていた。逃亡した容疑者ブッチと最後に会っていたジョーは、彼の捜索作戦に巻きこまれる。大自然を舞台に展開される、予測不可能な追跡劇の行方は。手に汗握る一気読み間違いなしの冒険サスペンス!

本作のキーワードは「合衆国環境保護局」です。権力を持つ巨悪にジョーがどう立ち向かうのか!? そしてブッチが環境保護局に受けた「不可解で冷酷な仕打ち」とは!? 大自然を舞台に、どれほどすさまじいアクションが展開されるのか!? そして、事件の背景のテーマ性の深さにも驚かれると思います。現代アメリカを象徴するようなテーマがしっかり盛り込まれているのも、本シリーズの素晴らしいところです。ベテラン作家さんの構成力ってほんとすごい……。

あとは悪役にも強烈すぎる存在感があって恐ろしいとか、ルーロン知事が面白すぎるだろ! とかまだまだ読みどころがたくさんある作品です。ぜひこの『発火点』をきっかけに、〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉の世界に踏み込んでみてくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします!

そうそう、担当編集者や野口百合子先生がTwitterで〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉について発信する際は、ハッシュタグ「#ジョー・ピケット 」をつけております。感想をつぶやかれるときなどに、ご活用いただけますと幸いです。

C・J・ボックス『発火点』は6月30日発売です(発売日は地域・書店によって前後する場合がございます)。

(東京創元社S)