娘が1歳11ヶ月のとき、理想の家族環境を求めて東京からスウェーデンへ家族3人で移住した翻訳家の久山葉子さん。
無理なく共働きで子育てできるとされる国での移住・子育て・日常生活を綴った、楽しく気軽に読めるエッセイ『スウェーデンの保育園に待機児童はいない――移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』が好評発売中です。
今回はその『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』から、久山さんが特に皆さんにお伝えしたい部分を抜粋して、5日連続で特別公開します。
第1回は、子育て東京からスウェーデンに移住した楽になったことをご紹介します。とことん合理的で無駄がない仕組みとは?
【スウェーデンに来て楽になったこととは】
子供が2歳直前という手のかかる盛りにスウェーデンに移住してきていちばん感動したのは、「とにかくいろいろな面で楽になった!」ということだ。すでに書いたように、職場や社会が小さい子供のいる家庭の事情を考慮してくれるのも大きいし、社会の仕組みや個人の考え方がとにかく合理的で無駄がない。スウェーデンには、無理なく共働きで子育てできる枠組みがあった。
例えば、残業がなくて4時から5時には退社できることだ。日本に住んでいたころと決定的にちがうのは、この点だろう。IT企業勤務の夫は8時に出勤して5時に退社する。通勤時間は15分ほどだから、5時15分には「ただいま」と言ってアパートの玄関をくぐる。金曜日などは暗黙の了解でみんな定時より早めに帰る(!)ので、4時半には帰っている。
ごくたまに急なトラブルで5時以降も働いたり、海外出張に行くために週末に飛行機移動をしたりすることはある。そういう場合は、余分に働いた時間分を別の日に休むことができる。
例えば学校の先生は、年に数度は夜に行われる保護者会やオープンハウスに参加しなければいけない。そこで働いた時間分は、後日授業に影響のない時間帯に早退したりして消化する。
会社によっては残業代を出して対処するところもあるし、別の機会に休んで消化することしかできない契約になっている場合もある。どちらにしても、本当にどうしても働かなければいけない場合以外、残業はない。
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