『汚れた雪』はアントニオ・マンジーニのイタリア本国で大人気の刑事もの。
生粋のローマっ子である警察官ロッコ・スキャヴォーネの物語です。
シリーズ累計130万部超ということですから、人気のほどがわかります。
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ロッコは愛妻家(妻の名はマリーナ)で、引退したら南仏で二人で暮らすのが夢でした。
が、今は、ある不祥事がもとで、なんと懲罰人事でアルプス山麓の小さな町アオスタにとばされて、そこの副警察長という身分に不満タラタラ。何しろ田舎のスキー場の町で雪の中の生活。ロッコはそんな場所での服装もいやでしょうがない。もこもこのダウンジャケットや、どたどたした大きなブーツなんて。
ローマ風の粋なスタイル、ローデンコートにクラークスのデザートブーツで歩き回ろうとします。そんなものでは、凍傷になってしまうというのに……。
アオスタのスキー場で起きた事件は、圧雪車に轢かれた死体発見から始まりました。
町の住人がすべて親戚同士といってもいいほど小さな町で起きた事件。
目的のためには、犯罪に手を染めることも辞さない、一匹狼的な警察官は、ちょっと古いのですが、どこか刑事コジャックに似ていなくもないのです。(『刑事コジャック』ご存じないですよね、シクシク)
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ロッコについて、著者は「彼は人生の敗者」だと、言っているとか……。屈折しているからこそ、人間らしく魅力があるのかもしれませんね。
アントニオ・マンジーニは、俳優であり、監督であり、脚本家であり、作家でもあるという人物です。
グーグル検索をしてみると、なるほどなかなかの二枚目(イケメン)ぶり。どうも犬好きらしく、大型犬と暮らしているらしいことが垣間見えます。
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イタリア・ミステリというと、(『薔薇の名前』はありますが)アンドレーア・カミッレーリのモンタルバーノ警部ものくらいしか思い浮かべられない、という状況から、そろそろ脱出する時期です。
是非是非、荒技、脱線にも目をつぶりたくなるロッコの魅力に触れてみてください。(編集部M・I)