甲子園の優勝投手がプロに入って、強打者から三振を奪う。ゴルフでアマがプロに勝つことがある。そんな場面を見せられると、プロとは何だろうと思う。誰だったかは失念したが、将棋の高名な棋士が「プロは、絶対アマには負けない」言ったそうだ。一度あったことで結論を出すのは無理だとも思うけれど、アマが勝ったりするとこの言葉を思い出してしまう。ボクシングは、相撲は、と次々とジャンルを変えて、プロというものを考える。偶然が作用するスポーツの分野では、たまにアマが勝つこともあるようだが、それでプロの存在に疑念を抱くのは失礼な話だとも思う。
さて、それでは囲碁の場合はどうなのだろうか。将棋の場合もそうだろうが、偶然というものがない世界だ。深い読みに裏打ちされた一手一手が応酬されるプロの対局には、アマは脱帽するしかない。
碁を打っていて、相手の意図を読み損なうか、気付いていない場合には、負ける確率は高い。また技術的に相手に追いついていない場合はもっと負ける確率は高い。その為に置碁というハンディ戦があるのだが。ともあれ手数が進んでいくと、形が形成される。確定地とか模様とか、その碁の骨格が出来てくる。時には弱い石も出来てくる。アマは直接的にそんな石を攻めて殺そうとする。しかしプロは直接的な攻めはしないし、プロの石はそんな簡単には死なない。死ぬとなれば「効キ」を残して別のところで代償を求める。常套手段である。そのような攻防を観るのは、プロの棋譜を並べる醍醐味と言えよう。
本書は、プロが一局の中でどのように考え、どのように打っているのかを解説したものである。プロの発想や読みを鑑賞することで棋力は大いに上がるだろう。またマネすることは学びに通じるとも言う。強くなる為には、プロの一手は難しくて分からないとばかりは言っていられない。