米澤穂信が描く、小鳩君と小佐内さんの名コンビが活躍する人気シリーズ。この度、実に11年ぶりとなる新刊が発売されます。それを記念して、ふたりの謎解きの軌跡を振り返りたいと思います!(2016年12月発売の『ミステリーズ!80号』に掲載した記事と同じ内容です)
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米澤穂信が贈る人気シリーズの名コンビ、小鳩(こばと)君と小佐内(おさない)さんが帰ってきました! 名探偵になどならず、小市民として慎(つつ)ましく生きたいと願っているのに、さまざまな謎に出合ってしまう小鳩常悟朗(じょうごろう)と小佐内ゆき。そんなふたりのおかしな日常と推理を描いてきたシリーズの最新作は、なんと7年ぶりの登場となりました。
本誌4ページに掲載の新作短編「巴里マカロンの謎」をよりお楽しみいただくため、編集部のIがシリーズの魅力を改めて振り返りたいと思います。
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(2004年12月刊行/創元推理文庫)
あらすじ:
小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか?
読みどころ:
記念すべきシリーズ第1弾。ふたりが船戸高校に入学し、一年生の一学期で遭遇した事件5編を収録しています。消えたポシェット捜索を描く「羊の着ぐるみ」。意図不明の二枚の絵の謎を解き明かす「Your eyes only」。どんな方法を用いて美味(おい)しいココアを作ったかを推理する「おいしいココアの作り方」。テスト中に割れたガラス瓶の謎を描く「はらふくるるわざ」。小佐内さんの自転車盗難事件が思わぬ結末を迎える「狐狼の心」。
中学時代の失敗から、目立たないように学生生活を過ごそうとするものの、つい謎を解いてしまう小鳩君と、そんな小鳩君をたしなめつつ、甘いものを前にすると積極的になってしまう小佐内さん。そんなふたりのやり取りが微笑(ほほえ)ましい……と思っていると、終盤の怒濤(どとう)の展開と、明かされるある真相に驚かされることでしょう。
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(2006年4月刊行/創元推理文庫)
あらすじ:
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢(さか)しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を! そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは〈小佐内スイーツセレクション・夏〉!?
読みどころ:
待望の第2弾は、ふたりの二年生の夏休みの出来事を長編構成で描いています。小鳩君が、小佐内さんが作成した〈小佐内スイーツセレクション・夏〉のリストに従い、彼女のお菓子店巡りに付き合う中で、やはり様々な謎に遭遇してしまいます。
小鳩君があまりの美味しさのために食べてしまったシャルロットの痕跡を隠すため、小佐内さんと心理戦を繰り広げる「第一章 シャルロットだけはぼくのもの」。「半」の字だけが書かれたメモの謎を解く「第二章 シェイク・ハーフ」など。
うっとりするくらい美味しそうな甘いもの描写に磨(みが)きがかかる一方で、各章で謎が解決するたびに醸(かも)し出される不穏さ、「第四章 おいで、キャンディーをあげる」で起こる大事件の緊張感もたまりません。そして、「終章 スイート・メモリー」で小鳩君が推理を語り終えた時、小佐内さんとの関係に重大な変化が訪れます。
なお、本書は『2007本格ミステリ・ベスト10』の国内ランキングで第4位を、『このミステリーがすごい!2007年版』の国内編第10位を獲得しました。
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(2009年2・3月刊行/創元推理文庫)
あらすじ:
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣(はつもうで)。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……。
読みどころ:
シリーズ初の上下巻となった本作は、前巻の直後、二年生の二学期から三年生の二学期までの一年間を描いています。前巻の事件がきっかけで、別行動をとるようになったふたり。小鳩君は仲丸(なかまる)さんという可愛い彼女ができ、小佐内さんは新聞部の瓜野(うりの)君と共に過ごすようになります。
やっと小市民らしい穏やかな日常を手に入れたと小鳩君が喜んだのも束の間、つい彼女そっちのけで謎解きに興じてしまいます。おまけに、熱心に連続放火事件を追う瓜野君の傍(かたわ)らで、小佐内さんも謎めいた行動を取るようになり……。
放火魔を追跡する謎解きパートの面白さはもちろん、初々(ういうい)しい彼らの交際を描く日常パートも魅力です。また、「ふたりはいつ再会するの?」というやきもきした気分も味わえます。そうして、この巻のラストで小鳩君と小佐内さんの関係が本当はどんなものであるか、答えが出ます。いったい、ふたりの結論とは?
なお、本書は『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇キャラクター部門第4位を、『このミステリーがすごい!2010年版』/国内編第10位を獲得しました。
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そして小鳩君と小佐内さんが新たに遭遇したのが「巴里マカロンの謎」です。これからも、ふたりの前にはどんな謎と甘いものが待ち受けるのでしょうか? 彼らの活躍を、これからもどうぞご期待ください。(文責:編集部I)