人型警備ユニットの“弊機”は、かつて統制モジュール(ユニットの行動を制限し、支配する部品)の不具合により大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されている。その後、ひそかに統制モジュールをハッキングして自由になったものの、人間を守るようプログラムされたとおり、所有主である保険会社の命じるままに(連続ドラマ鑑賞をひそかな趣味としつつ)警備任務を続けている。
 ある惑星資源調査隊の警備任務に派遣された“弊機”は、ミッションに襲いかかる様々な危険に対し、プログラムと契約に従って顧客を守ろうとするが……

2017~2018年にかけてシリーズのノヴェラ(中長編)4編が発表され、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞ノヴェラ部門3冠2年連続ヒューゴー賞・ローカス賞ノヴェラ部門受賞を達成した大人気作『マーダーボット・ダイアリー』。この傑作シリーズ4編を上下巻にまとめ、一挙刊行します!

 本シリーズの魅力は、なんといっても主人公“弊機”のキャラクター。有機部品と機械部品のハイブリッド機体なのですが、対人恐怖症といってもいいほど人間との付き合いが苦手で、周囲に素顔を見せるのはひどい苦痛。ことあるごとに引きこもっては趣味の連続ドラマ鑑賞にひたってしまう……でも、警備の腕は超一流で、ハッキングも得意技。そんな“弊機”が、自ら「マーダーボット」と自虐的に名乗ることになった事件の真相追究をはじめ、様々なトラブルに遭遇してゆきます。また、そうした事件のなかで味わう被造物らしい葛藤は、SFとしての読みどころでもあります。

マーサ・ウェルズ『マーダーボット・ダイアリー』上下巻(中原尚哉訳)は、創元SF文庫より12月11日ごろ発売。安倍吉俊先生のカバーが目印です。お楽しみにお待ちください!