――2019年1月某日。
校正課Hは、サベアロックフェスの会場にいました。
というのは半分冗談で、正確には、映画『屍人荘の殺人』の撮影が行われている、千葉県の某キャンプ場におりました。
エキストラとして撮影に参加してきたのです!
映画化が楽しみすぎてうずうずしていたところ、インターネットでエキストラ募集のお知らせを見つけたのが昨年12月。
いいなー、参加してみたいなー、でもエキストラなんてしたことないし緊張しそう……どうしようかな……としばらく迷っていたのですが、前日になって「ロックフェスの観客役のエキストラの人数が足りません」という告知が。
ならば!と喜び勇んで参加してきました。
なお、当日はエキストラ参加者自身のカメラなどでの撮影・録音は一切禁止だったため、こちらの記事は記憶だけを頼りに書いております。
記憶違い、勘違いなどあるかもしれませんが、ご了承ください。
さて当日お昼過ぎ。
集合場所である新宿駅西口に到着すると、すでに大勢のエキストラさんたちが列に並んでいました。
誘導のスタッフさんに名前を伝えて受付してもらい、私も列に並びます。
その後、バスでロケ地である千葉県のキャンプ場に向かいました。
とても人数が多かったので、何台かのバスに分かれて順次乗車する形に。
キャンプ場はけっこう山の中で、途中、「これはむしろ『魔眼の匣』へ向かう道では……」などとつい妄想がふくらんでしまいました。
キャンプ場はけっこう山の中で、途中、「これはむしろ『魔眼の匣』へ向かう道では……」などとつい妄想がふくらんでしまいました。
ロケ地に到着してまず目に入ってきたのは、サベアロックフェスのセットでした。
ステージ、物販コーナー、フードコーナー、会場エリアマップの看板などが配置された賑やかな雰囲気に、「サベアロックフェスが三次元に出現してるーーーーー!!!」とテンション上がりまくりです。(周りの方も静かでしたし、大人なので実際には叫びませんでしたが、叫びたいくらい嬉しかったです。)
さらにサベアロックフェスのロゴの入ったリストバンドも配られ、「私、今サベアロックフェスにいる……!」と感動。
まだ撮影が始まってもいないのに、この時点で「来て良かった」と涙ぐみそうになっていたのはここだけの話です。(ちょろいとか言わないで。)
撮影が始まるまでの間、スタッフさんたちはカメラや照明、エキストラの動きについて入念に打ち合わせを行っているようでした。
また、何人かの髪の長い女性のエキストラさんは、メイクさんにお団子などフェスっぽいヘアアレンジをしてもらっていたり。
そしていよいよ最初の撮影。
私の立ち位置からは見えなかったのですが、スタッフさんの説明によると、フェス会場で急病人が出て担架で運ばれていくシーンとのことでした。
「想像を絶する異常事態」が進行する前の段階とのことで、エキストラには「ごく普通にフェスを楽しんでいる観客」の役割が求められます。
スタッフさんの指示に従って、腕を上げてみたり、体を揺らしてみたり……。
何度かテストをして、本番があって、けっこうあっという間に撮影終了。
その後は夕食タイムとなりました。
夕食は現地で用意してもらえて、この日のメニューは麻婆丼または鳥すき丼(どちらか一方を選択)。
給食のような感じで配膳してもらい、大自然の中、レジャーシートに座っていただきます。ちょっと遠足のような感じで楽しかったです。
その後は、『屍人荘の殺人』の主人公たちと年齢の近いエキストラさんが呼ばれ、ロックフェス研究会のメンバーがフェス会場にやってくるシーンが撮影されていたようでした。
私は邪魔にならないよう遠~くの隅っこから撮影の様子を見ていたのですが、「あの人は○○さんの役かな……? 原作のどのあたりのシーンだろう……?」と、勝手に(この時点では、神木さん、浜辺さん、中村さん以外の俳優さんは発表されていなかったので)いろいろ想像しながら、楽しく待機していました。
また、待機中のほかのエキストラさんに話を聞くと、「俳優さんのファンで」という方が多かったです。
そうこうしているうちに、再びエキストラ全員に集合がかかります。
すでに日も暮れて、今度はロックフェスの夜の公演シーンの撮影とのこと。
今回もまだ「想像を絶する異常事態」はさほど進行していないらしく、昼間の撮影と同じように、腕を上げて体を揺らしたり、周りの人と笑い合ったりして、フェスを楽しんでいる観客を表現する役割でした。
昼間の撮影と違ったのは、より詳細に、エキストラひとりひとりの立ち位置までスタッフさんがチェックしていたこと!
男女比や、身長、着ている服の色合いなども細かく見て、映像になった時にどう見えるか計算し尽くしての調整という感じでした。
かく言う私も「そこの紫のパーカーの方、こっちに!」と、けっこう離れた場所からカメラの正面エリアに移動の指示を受けたのですが……これもしかして、スクリーンデビュー確定ですか!? わーい! 映画公開されたらしっかり確かめねば!(参加前の「緊張しそう」はどこへやら……)
……ところで。
現在1月です。
そして山の中のキャンプ場です。
1月の山の中です。
夜です。
寒いです。
めちゃくちゃ寒いです!!
おやつに持参したチョコレートが冷えすぎて噛めないくらい寒いです!!当然ですが、エキストラ全員、吐く息が真っ白です。
「これだと完全に真冬のフェスに見えちゃいますよね?」「原作どおりの夏フェスじゃないのかもしれないけど、いいのかな……?」等と周りの方と話していたところ、スタッフさんから指示が。
「本番では、なるべくでいいので息を止めてくださーい!」
「あと、コートも脱いでくださーい!」
あああー、ですよねー!
というわけで、私も息を止めてがんばりました。
真冬の夜の寒空の下、コートなしで、息を止めて、でも楽しい感じで。
名前も知らない周りのエキストラさんたちと、徐々に連帯感さえ生まれていた気がします。
そしてここで嬉しいご褒美が。
姿は見えなかったのですが、撮影中、少しだけ、後ろのほうから明智さんと葉村君の会話が聞こえてきたのです!!
ほんとに少しだったのではっきりとは聞き取れなかったのですが、たぶん、原作にはないオリジナルの会話だったような。
明智さんに振り回される葉村君が感じられるやり取りで、耳が幸せ。
そして映画公開がますます楽しみになりました。
その後、エキストラは事前に希望を出していた「終電までに帰りたい組」と「深夜の撮影にも参加したい組」に分かれて移動になりました。
私は「終電まで」希望だったので、その場で夜食のお弁当をいただいてから、来た時と同じようにバスで新宿まで送ってもらいました。
こちらはエキストラ参加者に配られたオリジナルの記念品。
不穏な雰囲気のロゴが入った、素敵なステンレスマグです。
――そんなエキストラ参加から、早9ヶ月。
現在はどんどん映画の詳細が発表されて、関係者向けの試写会なども行われているのですが、私はなかなかタイミングが合わず、この記事を書いている時点でまだ映画を観られておりません。
ちなみに初号試写に行った会社の先輩曰く、「Hさん映ってないか探してみたけど、全然見つからなかった」とのこと……。
ま、まあ、そうですよね! あの日だけでもエキストラ数百人いましたからね……。冷静に考えたら、映っていたとしても米粒サイズですよね……。
もちろん映画が楽しみな気持ちに変わりはありません!
そして一足先に『ミステリーズ!vol.98』に掲載のシリーズ新作短編を読ませていただいたのですが、こちらもファンには嬉しすぎる内容となっております。みんな読んで。ネタバレされる前に読んで。
(だってまさかあの人が○○○○○の○○○○してたなんて思わないじゃないですか……可愛い……めっちゃ可愛い……。)