〈名作ミステリ新訳プロジェクト〉第10弾となる、モーム、フォークナー他/小森収編/深町眞理子他訳のアンソロジー『短編ミステリの二百年1』が創元推理文庫からいよいよ10月25日に発売されます。
どんな本なのか、カバーの内容紹介から少し引用をします。
江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』を擁する創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たな一大アンソロジー。およそ二百年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作・傑作を評論家の小森収が厳選、全6巻に集成する。
……ちょっと大げさすぎる? いいえ、決して嘘偽りではない内容紹介です。この〈Webミステリーズ!〉で現在も連載中である小森収氏の評論「短編ミステリの二百年」(書名に合わせて今月から「短編ミステリ読みかえ史」より改題しました)をベースに、純粋に面白い作品から歴史上重要な位置を占める作品まで、さまざまな短編を収録していきます。『世界推理短編傑作集』と作品の重複はいっさいありませんので、同書で短編ミステリの面白さに目覚めたかたはぜひこちらもお買い求めください。
では改めて、第1巻の収録作品をお知らせします。
「霧の中」リチャード・ハーディング・デイヴィス/猪俣美江子訳「クリームタルトを持った若者の話」ロバート・ルイス・スティーヴンスン/直良和美訳
「セルノグラツの狼」サキ/藤村裕美訳
「四角い卵」サキ/藤村裕美訳
「スウィドラー氏のとんぼ返り」アンブローズ・ビアス/猪俣美江子訳
「創作衝動」サマセット・モーム/白須清美訳
「アザニア島事件」イーヴリン・ウォー/門野集訳
「エミリーへの薔薇」ウィリアム・フォークナー/深町眞理子訳
「さらばニューヨーク」コーネル・ウールリッチ/門野集訳
「笑顔がいっぱい」リング・ラードナー/直良和美訳
「ブッチの子守歌」デイモン・ラニアン/直良和美訳
「ナツメグの味」ジョン・コリア/藤村裕美訳
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「短編ミステリの二百年」小森収
第1巻にはミステリの豊かさを象徴する、あるいはミステリの可能性を広げるような11作家の12短編を収録。すべて読む価値ありなのですが、なかでも編集者のお気に入り作品をいくつかご紹介します。
まずはウィリアム・フォークナー「エミリーへの薔薇」。言わずと知れた超有名短編ですが、本書では深町眞理子先生による新訳を収録しました。名作の価値を鮮明に伝える、すばらしい訳文でご賞味ください。
リング・ラードナー「笑顔がいっぱい」も非の打ち所がない逸品です。きびきびした筆致で、ひとりの交通巡査と若い女性のささいな交流を描いたこの作品、余韻……といっていいのか、いつまでも心に残るものがあるのです。
このアンソロジーを刊行するにあたり、初めて読んだ中では、サマセット・モーム「創作衝動」が印象的でした。ある閨秀作家(文学的評価は高いが出す本はさっぱり売れない)がいかにして空前のベストセラー・ミステリを生み出すに至ったかを物語る、皮肉とユーモアがたっぷり詰まった秀作でした。
巻末には、〈Webミステリーズ!〉の連載を大幅改稿した評論を収録。なぜこれらの作品が選ばれたのかの解説や、同時期・共通テーマの読みのがせない作品についての言及などもふんだんにされておりますので、ブックガイドとしてもご活用いただけるよう、索引もつけました(本書収録作品、編者のおすすめ作品はひと目でわかる目印つき!)。
そして次巻『短編ミステリの二百年2』は2020年3月刊行予定です。気になる収録作家・作品についてはまた時期を見てお知らせしますが、11作家の11短編+小森収「短編ミステリの二百年」という構成を予定しています。こちらもお楽しみに!