会社近くで見かけるのはドバト。
 家の近くで見かけるのはキジバト。
 ハトといえばこの2種類しか見たことがなかったが、噂に聞く「アオバト」を見たいと、神奈川県の大磯町へ行ってきた。

アオバト1

 その名の由来は姿を見れば一目瞭然だろう。
 美しい緑色のハトなのだ。
(あお【青】……晴れた秋空や藍染めのような色。また、その系統の色。▽後者の場合には「青葉」のように緑にも言う。『岩波 国語辞典』 第七版 新版より)

 ふだんは山地の林で暮らしているが、海岸に海水を飲みにくるという不思議な習性があり、その集団飛来地として有名なのがここ大磯町の照ヶ崎海岸で、町の鳥にもなっている。

 アオバトが照ヶ崎海岸にやってくるのは1年のうち5月から10月のあいだで、よく見られるのは日の出から午前10時まで、あとは夕方の時間帯らしい。ところが私が到着したのは午前10時を過ぎたころ。10時を過ぎたらまったく来なくなるわけでもないでしょと特別早起きもしなかったのだが、アオバトの姿は……ない。甘かった、と一瞬絶望し放心していると、どこからか、鳥の群れがやってきた。あれはもしや……

アオバト2

 来た! 来ました、あれがアオバトだーっ。

 頭から胸にかけて黄緑色、腹は白っぽく、翼はオスとメスとで色に違いがある。くちばしは青灰色。

アオバト3

 翼が赤紫色なのがオスで、暗い緑色なのがメスである。

 ところが喜んだのも一瞬のことで、アオバトはすぐにどこかへ飛び去ってしまった。

 出会えたとはいってもたった一目だけでは物足りず、また来ないかなあと辺りを見回しつつ待っていると、しばらくして背後の大磯丘陵上空に、旋回する鳥の群れを発見。また来た!

 どうやらアオバトはこうやって、岩場に来て海水を飲んでは去り、ふたたび来ては去りを繰り返しているようで(同じ個体なのかはわからないが)、私がそこにいるあいだ、何度もその光景を見ることができた。大磯まで来た甲斐があったというものである。

アオバト4

 アオバトたちはこの岩礁のくぼみに溜まった海水を飲んでいるらしい。海水を飲む理由は、ふだん食べている木の実などにナトリウムが含まれていないので、その不足を補うため、と考えられているようだ。

 ともかく、こうしてアオバトを何羽も見ることができた。ひとつだけ残念だったのは鳴き声を聞けなかったことである。「アーーアオーアオー」などと唸るような声らしい。もしかして「アオバト」ってそこから? いや、違うだろうな。次に見る機会があれば、ぜひ声も聞きたいものである。ちなみに、『広辞苑』第七版にはアオバトについてこう書いてある。「声は尺八の音に似て哀調をおび、不吉とされる。尺八鳩。」

アオバト5

おまけ

ホオアカ

 こちらの写真に写っているのは、秋の気配漂う、長野県の菅平高原で見たホオアカ。目を凝らして、ほっぺが赤いのを確認してみてください。
(校正課M)

〈参考〉

大磯町の観光情報サイトisotabi.com
日本の鳥百科