暑さが盛りを迎え、夏本番の今日この頃。そんな時期に読みたいジャンルと言えば…? そう、身体をひんやりと冷やしてくれるホラーですね。ということで、8月号の『ミステリーズ!』は大ボリュームの怪奇・幻想特集号でお贈りします!

特集「怪奇・幻想小説の新しい地平」は、70ページにわたってとにかく盛りだくさん!まず、小説は3本立て。西崎憲さんによる、ライフワークとも呼ぶべき〈蕃東国年代記〉シリーズ最新作「騒擾博士」「繭の見る夢」で第2回創元SF短編賞佳作入選した、空木春宵さんによる浅草を舞台にした「感応グラン=ギニョル」『両シチリア連隊』のアレクサンダー・レルネット=ホレーニアによる、ある奇蹟を描いた「トーテンレーベンの三博士」。いずれもバラエティに富んでいます。

また、異なる視点からも怪奇・幻想小説を読み解きます。恩田陸さんと東雅夫さんの対談では、平成の怪奇小説を振り返っています。さらに、南條竹則さんによるエッセイ「熊の掌会」、読書ブログ『奇妙な世界の片隅で』の高橋一太さんによる評論「怪奇小説翻訳概況」『平成怪奇小説傑作集』シリーズなど、数多くの怪奇・幻想小説の装丁を手がけた柳川貴代さんへのインタビューなど、充実の内容です。
ちなみに、「私の一冊」は『ぼぎわんが、来る』でおなじみの澤村伊智さんが登場。特集にも通じる、ある作品について熱く語っています。何をお選びになったのか、お楽しみに。

その他、新連載は、松坂健さんと新保博久さんの対話形式で翻訳ミステリを振り返る、「翻訳ミステリ四十年」です。同年代のおふたりが語る、第1回のテーマ「軽ハードボイルド」は見逃せません。また、読切りの、幽霊屋敷を舞台に贈るシリーズ最新作、名取佐和子さん「鋏の音」や、芦辺拓さんによるエッセイ、「『探偵小説万歳!』ポール・アルテ氏を迎えて」も要注目です。

本書が真夏を楽しく乗り切るための、手助けになりましたら幸いです。