堂場瞬一さんといえば、まずは警察小説。そしてもうひとつの核にスポーツ小説があります。最近ではそこに企業小説というラインも加わっていますが、今月発売の新作『決断の刻』は、警察小説であり、企業小説であり、スポーツ小説でもあるのです。
そんなことがあり得るのか? あるのです。お読みいただければ納得していただけるはずです。
しかもスポーツの部分はラグビーです。堂場さん御自身、高校時代はラガーマンでいらしたので、ラグビーを題材にした作品ももちろん書かれています。
しかし、今回の作品でのラグビーは、純粋なスポーツ小説の題材としてのラグビーではありません
大人の男をたち、警察官と企業人、それぞれそれなりに自分の仕事に誇りを持って人生を歩んできた二人の男を固く結び合わせる絆としてラグビーというスポーツが描かれているのです。しかもただの味つけではなくストーリーにしっかり組み込まれて。
ゲラを読んだ営業部の男性が、「ラストの十何ページで胸が熱くなった! いやー、よかった」と言いに来てくれて、担当者は感涙。
傑作です。本当に。
決してラグビーのワールドカップが近いから、ラグビーをスパイスに使ったわけではありません。二人の男の絆はどういうものにしよう、ということになった時に、たまたま、担当者もラグビー・マニアだったため、話が盛り上がってこうなったというのが真相です。
ある商社の子会社のコンサルティング会社の男性社員が住宅の建築現場で他殺体で発見されるという事件が発端です。するとその社の女性社員の一人が失踪していて家族から行方不明者届けが出たという。
ほぼ同時期に、そのコンサルティング会社の海外贈賄問題を内偵していた刑事が姿を消す。
こんなふうに話は始まります。
そこにラグビーがどう関わるのか?
小社刊の堂場作品は『穢れた手』、これは警察の闇と警察官の熱い友情を描いた作品でした。
本作『決断の時』は、これぞ堂場ワールドの集大成とも言うべき作品です。
どうぞお楽しみください。