シャーロック・ホームズが唯一意識した女性アイリーン・アドラー、
ワトスン博士の命を守るため仲間とともに大冒険!?
6月の新刊キャロル・ネルソン・ダグラス『ごきげんいかが、ワトスン博士』は、アーサー・コナン・ドイルの〈シャーロック・ホームズ〉シリーズに登場する女性アイリーン・アドラーを主役とするシリーズです。
アイリーン・アドラーは短編「ボヘミアの醜聞」(『シャーロック・ホームズの冒険』収録)にて登場。世界一の名探偵にひと泡吹かせたことで強烈な印象を残す女性です。じつは彼女もまた、オペラ歌手にして女優であると同時に、ひとかどの「探偵」だった――という設定でダグラスが書いたパスティーシュ(スピンオフ)は評判となり、長編8作からなる人気シリーズとなりました。
じつは本書はシリーズ3作目なのですが、ホームズに関する最低限の知識(世界一有名な探偵であること、ワトスン博士という相棒がいることetc)さえあれば、いきなりここから読んでも大丈夫です。『ごきげんいかが、ワトスン博士』という邦題のとおり、今回はワトスン博士をめぐる事件にアイリーンとホームズが対峙します。ふとしたなりゆきで、パリでひとりの男性を介抱したアイリーンと友人のペネロピ―。その男クウェンティンは偶然にもペネロピーの古い知り合いで、人を探して旅をしている最中でした。尋ね人は、かつてアフガン戦争で男の命を救ってくれた軍医。手がかりはワトスンという名前だけ――
医者のワトスン、といえばひとり思い当たる人物がいるアイリーンたち。ホームズの親友ジョン・H・ワトスン博士こそ探す相手と思われるのですが、クウェンティンがワトスンを探すのは、神出鬼没の敵から医師の命を守るためでした。なぜワトスンがねらわれるのか? そして「敵」の正体は……? 名探偵ホームズも巻きこんで、事件はロンドンでクライマックスを迎えます!
解説は大のシャーロッキアンとして知られる北原尚彦氏。シリーズの概要やいかに正典をきちんと踏まえているか、ほかのパスティーシュ作品でのアイリーン・アドラーの扱いについて述べていただきました。そしてイラストはアオジマイコ氏。『モリアーティ秘録』で魅力的なモリアーティ教授とモラン大佐を描いたアオジさんによる、美麗なアイリーンと切れ者なホームズの姿は必見です。
キャロル・ネルソン・ダグラス/日暮雅通訳『ごきげんいかが、ワトスン博士』は6月28日刊行予定です。