みなさんこんにちは。翻訳ミステリ班Sです。ついに、フェルディナント・フォン・シーラッハ『刑罰』が刊行となります!!! 
フェルディナント・フォン・シーラッハはドイツ出身の作家です。刑事事件専門の弁護士として長年活躍し、2009年に『犯罪』で作家デビューしました。この作品は実際に起こった事件に材を得て書かれた連作短篇集で、ドイツ屈指の文学賞であるクライスト賞を受賞し、日本でも2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第一位に輝きました。鋭利で洗練された文体と意外性に満ちた物語で絶大な反響を巻き起こしただけでなく、『このミステリーがすごい! 2012年版』海外篇で二位にランクインするなど、ミステリとしても高く評価されています。

その後『罪悪』『コリーニ事件』『禁忌』『テロ』などを発表し、文学賞5冠、著作が40か国で翻訳、累計500万部を突破しています。そんな著者の最新作『刑罰』は、異様な罪を犯した人々の素顔や、刑罰を科されぬまま世界からこぼれ落ちた罪の真相を、切なくも鮮やかに描きだしています。今回、本になる前の校正紙(ゲラ)で発売前に作品を読んでいだき、みなさんの感想をおうかがいするというキャンペーンをおこないました。たくさんのご応募ありがとうございました。

本記事では、キャンペーンでいただいたご感想コメントを抜粋してご紹介いたします。もうほんとうに胸が熱くなるコメントばかりで感動しました! 著者の新作をずっとお待ちいただいていたのだなということもわかりましたし、翻訳者の酒寄進一先生の御訳文の魅力にも言及していただきました。


* * 読者のみなさんのご感想 * *

読み終えたあと、しばらく放心状態から抜け出せなかった。淡々とした語り口が物語に説得力を与え、同時に無情感を漂わせている。これほどまでに心に訴えかけてくる小説には、なかなかお目にかかれない。
(オオツキさん)

初めて読む作家さんなので、「どんな感じなのかな?」とワクワクしながらページを捲り続けました。
一つ一つの作品が短く、分かり易い訳の御蔭で一気読み出来ました。
(燎さん)

重い罪を犯しながら、法から逃げ延びて生きている人がいる。
潔白でありながら、罰を受けて苦しんでいる人がいる。
淡々とした語り口は、時として冷酷にも見えるけど、現実から目をそらさずに世の中を見ようとする著者の、強い意志が感じられる作品集でした。
(naotanさん)

淡々と描かかれていて、すらすらと読み進めることができるのに、内容が重厚で、ずっしりと心に重くのしかかる。
やるせなさの残る作品から、考えさせられるものまで。どの短編も甲乙つけがたい素晴らしい作品群。
(40代女性の方)

何気ない日常から、ほんの少し外れたところにある犯罪に、どのような刑罰が下されるのか。寝る間を惜しんで読みました。
(30代男性の方)

どの話も予定調和に終わらず人の表も裏も
影も陽も描かれていてどのスイッチで
どのようなことを起こしてしまうのか
計り知れない恐ろしさとともに弱さと強さを感じました。
どれも好きで「最も良かった作品」を選ぶのが大変でした。
(かっこーさん)

私はこの『刑罰』が初めてのシーラッハであるけれど、改めて前作から読んでみることにしようと思います。
酒寄進一先生の素晴らしい訳に、この小説を読ませて頂いたことに、心から感謝いたします。
(ハルミンさん)

12編の短編それぞれにドラマがある。登場人物たちは、自分の存在に自信がなかったり、容姿にコンプレックスを抱えていたり、他者によって抑圧されていたりする。ひとりひとりの登場人物が葛藤する姿が、読んでいてどれも胸に深く刺さってくるように感じた。きっと、多くの読者はそれぞれの登場人物に自分自身を重ね合わせてしまうだろう。
(タカラ~ムさん)

登場人物の一人ひとりに、共感できるところがあったり、どうしてこの人物はこのように行動してしまうのだろうかと悲しく思ったりした。フォン・シーラッハが本当に書きたかったのは、生きていること自体が「刑罰」なのではないかと思うほどの人間の悲しさや孤独ではないかと思った。
(木苺さん)

純粋に楽しむというにはあまりに重い話の数々だったが、おそらくどんな人の心にもある醜い部分と美しい部分をみごとに取り出してみせ、大げさに言えば「どう生きるか」を考えさせるような素晴らしい作品だと思った。そして、私はドイツ語は読めないが、おそらく淡々と短い文章で力強い言葉を重ねていく原著者の文体を巧みに日本語に落とし込んでいると思われる訳者の方にも尊敬と感謝の念を抱いた。
(きのっぴーさん)

* * *

全部紹介できないのが悔しいくらい、気持ちのこもったコメントばかりでした!! フェルディナント・フォン・シーラッハの最新作ということで、担当編集者はけっこう緊張しながら編集作業を進めていたのですが、送られてくるみなさんのコメントを読んで、とても励まされました。なかなか読者さんのご感想を直接いただける機会はすくないので、貴重なご意見を本当にありがとうございました。

そして、アンケートを採ってみた本短篇集収録作のうち、「最も良かった作品」を選んでくださいでいちばん票数が多かった作品は……。

「奉仕活動(スボートニク)」
そして
「友人」
でした!!!

計7票ずつでトップ、そのほかは「逆さ」「ダイバー」の票が多かったです。でも「選びきれない!」「どれも良かった!」というお声も多く、とても嬉しかったです。こちらもありがとうございました。


『刑罰』は6月12日ごろ発売です。お楽しみにお待ちいただけますと幸いです。

『刑罰』の試し読みはこちらをどうぞ