綾乃は高等部1年生ながら、生徒会副会長になり、同じく副会長の青滝真奈(赤鬼)と共に、会長の粟田口迪麿(黒鬼)のもとで、生徒会の活動にかかわることになってしまった。
ディアーヌ学院では夏至の夜に夏至祭を行う。綾乃もその準備でおおわらわだ。その疲れがたまったのか、綾乃は水晶玉占いの授業中突然気を失う。心配する婚約者の雪之丞だったが、血液検査の結果は特に異常なし。その後夏至祭も大成功に終わり(最終日に、撫子寮の寮監でもある三船先生の妹だという魔女が、英国からやってきたりというハプニングもありつつ)、あとは楽しい夏休みを待つのみ……のはずだった。ところが休みを目前に、気になる噂が綾乃の耳に入ってきた。群馬県の山奥にある五郎丸湖で、ネッシーに似た謎の生物が目撃されているというのだ。忘れもしない二年前の夏、故郷の角田村で綾乃を襲った首長竜、あれは確かにアロウが倒したはずだ。そんなとき、綾乃たちは五郎丸温泉にある生徒会長の別荘に招待される。
妖怪と人間が共に学ぶ魔女学校を舞台にした、人気の学園ファンタジイ第三弾。
●この作品はこんな本を参考にしています
参考文献
- 『聖魔女術――スパイラル・ダンス――』スターホーク著 鏡リュウジ・北川達夫訳 国書刊行会
- 『鏡リュウジの魔女と魔法学』鏡リュウジ 説話社
- 『フランス文化誌事典』ジョルジュ・ビドー・ド・リール著 堀田郷弘・野池恵子訳 原書房
- 『日本昔話通観 第1巻 北海道(アイヌ民族)』稲田浩二・小澤俊夫編 同朋舎
- 『日本伝説大系(第1巻 北海道・北奥羽編)』宮田登編、阿部敏夫他著 みずうみ書房
- 『アイヌ民譚集―付,えぞおばけ列伝』知里真志保編訳 岩波文庫
- 『コロポックルとはだれか 中世の千島列島とアイヌ伝説』瀬川拓郎著 新典社新書
- 『アイヌ学入門』瀬川拓郎著 講談社現代新書
- 『図解アイヌ』角田陽一著 新紀元社
- 『ネス湖の怪獣』ティム・ディンスデール著 南山宏訳 大陸書房
- 『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人著 新潮文庫
- 『大人の恐竜図鑑』北村雄一著 ちくま新書
4月、綾乃は無事ディアーヌ学院高等部に進級し、寮も撫子寮から白藤寮に移った。残念ながら雪之丞や親友の絵葉とは違うクラスだ。一方中等部には、初々しい新入生が沢山入学してきた。雪之丞の従妹のまりんや、絵葉の弟大地や、人間の女の子桜子もそのひとり。
そしてオリエンテーションや新入生歓迎会で慌ただしい一週間が終わったころ、綾乃のクラスに転校生がやってきた。ロシアから来た礼儀正しい水妖ボダくんことヴォダーくんは、両生類っぽい見かけにもかかわらずあっという間にみんなの人気者になった。
だが、そのころから学院内で奇妙なことが起こり始める。学院の周辺で不審者が目撃され、寮の部屋から次から次へとお八つが消える。なにかがおかしい……。
第2回創元ファンタジイ新人賞優秀作受賞作『ぬばたまおろち、しらたまおろち』シリーズ。妖怪と人間が一緒に学ぶ魔女学校を舞台に繰り広げられる、不思議で愉快な魔法学園ファンタジイ。
●この作品はこんな本を参考にしています
参考文献
- 小川未明『定本 小川未明童話全集1』大空社
- 上笙一郎『未明童話の本質―「赤い蝋燭と人魚」の研究―』勁草書房
- 「北方文学」第二号(明治四十五年六月)
- 大迫徳行他『日本伝説大系(第3巻 南奥羽・越後編)みずうみ書房
- 谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』中公文庫
- ヴィック・ド・ドンデ『人魚伝説』(荒俣宏監修、富樫瓔子訳)創元社
- 田辺悟『ものと人間の文化史 143 人魚』法政大学出版局
- 九頭見和夫『日本の「人魚」像』和泉書院
- フェリックス・ギラン編『ロシアの神話』(小海永二訳)青土社
- 斎藤君子『ロシアの妖怪たち』大修館書店
- 栗原成郎『ロシア異界幻想』岩波新書
- 岩井宏實『暮しの中の妖怪たち』河出文庫
- 鳥山石燕『鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集』角川ソフィア文庫
- アレクサンドル・プーシキン『プーシキン全集3 民話詩・劇詩』(北垣信行・栗原成郎訳)河出書房新社
- 井本農一他校注・訳『新編 日本古典文学全集71 松尾芭蕉集②』小学館
引用に際し、歴史的仮名遣いは現代仮名遣いにあらためました。
両親を交通事故で失い、ひとり伯父の家に引き取られた綾乃。ひとりぼっちの綾乃には、誰にも言えない秘密の親友がいた。
それは幼いころ洞穴の割れ目で眠っていたところを見つけた、掌に載るくらいの小さな白蛇アロウ。人間の言葉をしゃべる不思議な白蛇はみるみる成長し、綾乃が14歳になる今では立派な大蛇だ。両親が亡くなって辛いときにもアロウはなぐさめてくれ、事故で怪我をした足のリハビリも励ましてくれた。綾乃にとっては大切な存在だ。
14歳になった今年の夏、綾乃は村の雨乞い祭の舞い手に選ばれた。だが、祭の当日、サーカスから逃げ出したアナコンダが現れ、村は大混乱に。そんななか綾乃は謎の男に襲われる。危うし綾乃!
だが、そこに疾風のように箒で現れ、間一髪彼女を救ったのは、村に滞在して妖怪の伝承を実地調査していた美人の女性民俗学者の大原先生だった。
え? 箒? 箒で空を飛ぶのは……魔女!? 魔女の大原先生、そしてアロウの活躍もあって無事事態は納まるが、こんなこと村のみんなに説明できるはずもない。
綾乃はそのまま先生の母校ディアーヌ学院に連れていかれ、そこで学ぶことに。
だが、ディアーヌ学院は妖怪たちが魔女と一緒に魔法を学ぶ奇妙な学校だった。岡山の田舎、横溝正史そのままの世界から一転、ハリー・ポッターばりの魔法学校(でも妖怪がいる)で学ぶことになった綾乃の運命やいかに?
読めば絶対好きになる。奇想天外、痛快無比、学園ファンタジイの決定版!
●この作品はこんな本を参考にしています
参考文献
- 森鷗外『森鷗外全集11 ファウスト』(ちくま文庫、一九九六年)
- 宮沢賢治『宮沢賢治全集8』(ちくま文庫、一九八六年)
- 宮沢賢治『新編 宮沢賢治詩集』(新潮文庫、二〇一一年改版)
- ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(ハヤカワ文庫SF、二〇一〇年)
- 横溝正史『八つ墓村』(角川文庫、一九七一年)
- 横溝正史『悪魔の手毬唄』(角川文庫、一九七一年)
- グリム兄弟『初版 グリム童話集1』(白水社、二〇〇七年)
- グリム兄弟『完訳 グリム童話集(一)』(岩波文庫、一九七九年改版)
- 森島恒雄『魔女狩り』(岩波新書、一九七〇年)
- ゲリー・ジェニングズ『エピソード魔法の歴史』(現代教養文庫、一九七九年)
- 上山安敏『魔女とキリスト教』(講談社学術文庫、一九九八年)
- 西村佑子『『グリム童話』の魔女たち』(洋泉社、一九九九年)
- 度会好一『魔女幻想』(中公新書、一九九九年)
- 池内 紀『悪魔の話』(講談社学術文庫、二〇一三年)
- 木下 浩『岡山の妖怪事典―妖怪編―』(日本文教出版株式会社、二〇一四年)
- 木下 浩『岡山の妖怪事典―鬼・天狗・河童編―』(日本文教出版株式会社、二〇一五年)
引用に際し、歴史的仮名遣いは現代仮名遣いにあらためました。
(2017年9月6日/2018年8月8日/2019年5月27日)