かつて恋人と交わした、人生で一番美しい約束を果たすため、男は旅に出る……


 世間を避けるように、ひとり離れ小島に住む元医師フレドリック。彼は過去に犯した医療ミスから逃れるように、この島で隠遁生活を送っている。仲間と言えば年老いた犬と猫だけ。群島の郵便配達人と言葉を交わすほかは、ほとんど人と話すこともない。

 そんな彼のもとに、ある日、三十七年前に捨てた恋人ハリエットがやってくる。治らぬ病に冒された彼女は、かつてフレドリックが彼女にした約束を果たしてくれるよう、求めにきた。「わたしが生まれてからいままでの間にもらった一番美しい約束」。白夜の下、スウェーデン北部の深い森の中に広がる湖で二人で泳ごう、という昔の約束を果たすよう求めに来たのだ。三十七年前、フレデリックはその約束を果たすことなく、ハリエットを捨ててアメリカにわたってしまった。

 人生の黄昏を迎えたいま、かつての恋人のたったひとつの願いをかなえるべく、フレドリックは島をあとにする。その旅が彼の人生を思いがけない方向へと導くとも知らず……。

〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者、北欧ミステリの帝王が描く、孤独な男の贖罪と再生、そして希望の物語。。