悪意

「トム」
ユーディットのもとに夜中にかかってきた一本の電話、それは二十二年前に死んだはずの息子トムからのものだった。トムと名乗る男は、ユーディットに会いたいと言うのだが……

「レイン」
亡くなった著名な作家レイン、彼の遺作はいかなる条件においても母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという、奇妙な条件が付されていた。翻訳者の“わたし”は遺作を訳しながらレインの死の真相が気になって……。

「親愛なるアグネスへ」
夫の葬式で久し振りにかつての親友ヘニイと会ったアグネス、旧交を温めた二人の交わす書簡はやがてとんでもない方向へ……。

「サマリアのタンポポ」
妻と離婚を決意した主人公“わたし”は、三十年ぶりに故郷の土を踏む。ホテルに泊まっている“わたし”のもとに、かつて恋した少女ヴェラ・カルからメッセージが……。

 他「その件についてのすべての情報」の全5編を収録。

 デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた傑作短編集。

 著者は2000年にガラスの鍵賞を受賞、またスウェーデン史上初めて、推理作家アカデミーの最優秀賞に三度も輝いた北欧ミステリの名手。2019年には、彼のスウェーデン文学における功績をたたえて勲章が国王より授与された。