『このミステリーがすごい!』をはじめとする主要ミステリ・ランキング3冠を達成し、第18回本格ミステリ大賞を受賞した2017~2018年のミステリ界の話題の席巻した『屍人荘の殺人』。先日豪華キャストによる映画化も発表され、まだまだ盛り上がりを見せる屍人荘ワールドですが、待望の続編『魔眼の匣の殺人』がいよいよ本日2月20日に発売日を迎えました。


『屍人荘の殺人』は鮎川哲也賞受賞作。選考委員の先生方から太鼓判を押され受賞が決まり、今村さんとの打ち合わせを重ねる中で、この魅力的なキャラクターと世界観で二作目の執筆をお願いしました。とはいえ執筆時は応募原稿だったわけで、今村さんはシリーズ化を見越して書いていたのではなく……。

主人公たちはこれからどうなっていくのか、○○○に代わる装置とは、班目機関(班目の漢字は【班】です! はん!)とはどういう組織なのか……。すべては受賞が決まったのち、ゼロから考えることになりました。苦難の道の始まりです。

数々のインタビューで答えていますが、今村さんはそれまで短編賞への投稿を主としていたため、初めての挑んだ長編が『屍人荘の殺人』でした。それで受賞するのだから驚きです。でも、ということは、長編を書くのは二回目だ!

今村さんはまずはトリックを決めてから、ストーリー展開を考えるタイプです。「オカルト的な要素×本格ミステリ」という枠組みは踏襲するとして、まずは○○○に代わるモチーフを決めるところから。うんうん唸っていただいて、ようやく「予言者」にたどり着きました。次に「予言者」をミステリとしてどう料理していくか考えます。そこからう~~~~んと唸ってプロットができあがり、ようやく執筆に入ります。書いてしまえば簡単ですが、ここまでで相当の苦しみが……。

「自分が読者だとして、この作品を面白いと思うか」今村さんの判断基準はぶれることがありませんでした。妥協せずアイディアを練り込み、責了のギリギリまで読みやすくなるよう文章に心を砕きました。その客観性と対応力は、本当に長編書くの二回目? と編集者が疑うほど。

書き上げては推敲の繰り返し。そうこうしているうちにあっという間に一年半が過ぎ、ようやくこの日を迎えることができました。
すべては待っていてくれる読者のみなさま、棚に並べてくれる書店のみなさまのおかげです。

夏の集団感染事件から数ヶ月後を舞台に描かれれた本作。
前作のエピローグにあたる部分が本作のプロローグにあたります。新生ミステリ愛好会の日常から幕を開ける、冒頭の試し読みはこちらからどうぞ。

『魔眼の匣の殺人』冒頭を立ち読みする

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