好評をいただいております、書評家の末國善己さんを編者としてお送りする「時代小説のヒーロー×本格ミステリ」のシリーズ。柴田錬三郎『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選』、笹沢左保『流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選』、泡坂妻夫『夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選』に続く、シリーズ第4弾をお届けします!
今回の名探偵は、捕物帳のヒーローと言えばこの人! 知らない者はいない有名人、銭形平次です。ここであらためて、プロフィールをご紹介しましょう。彼は、作家・音楽評論家として知られる野村胡堂が生み出した、「五大捕物帳」のひとつ、「銭形平次捕物控」の主人公。江戸時代、神田明神下で恋女房のお静と共に暮らす岡っ引です。子分の八五郎ことガラッ八を従え、投げ銭を武器に活躍します。
映像化も数多く行われ、長谷川一夫さん、里見浩太朗さん、大川橋蔵さん、風間杜夫さん、北大路欣也さん、村上弘明さんなどの主演で、映画化・ドラマ化されました。
読者の皆さんの大半は、「テレビでドラマを見たことがあるor名前は知っているけれど、原作を読んだことがない」方が多いのではないでしょうか? 実は原作は、本格ミステリ作品が多くあるのです! これは野村胡堂が江戸川乱歩と親交が深く、ドイルやクリスティ、オルツイを好んで読んでいたことによります。
今回は、全383編からミステリに特化した、傑作17編を厳選した決定版をお送りします。
見せ世物小屋にて、水槽で泳ぐ美女ふたりのうちひとりが殺された謎を解く「人魚の死」。暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる「櫛の文字」。評判の良い美人の妾が奉公した材木屋で、店を脅かす事態が発生する「小便組貞女」。世間を騒がす怪盗の意外な正体を暴く「鼬小僧の正体」。
人間消失事件、衆人環視下の殺人、安楽椅子探偵もの、雪の密室、暗号もの、毒殺トリックなど、バラエティに富んでいるので、どの短編も読み応えあり。
躍動感あふれる、銭形平次のカバーイラストが目印の本書を、ぜひお手にとってください!