あけましておめでとうございます。
今年刊行予定のSF・ファンタジイ作品ラインナップの一部をご案内いたします。読書計画の参考としていただければ幸いです。
ここに紹介した以外にも新作や名作の復刊・新訳など、東京創元社は今年も良質の作品をご紹介してまいります。
本年もご愛読のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
(タイトルは一部を除き仮題です)


《創元日本SF叢書》(四六判仮フランス装)

酉島伝法『宿借りの星』(3月刊行予定)
その惑星では、かつて生物兵器として生み出され人間を滅ぼした異形の生き物たちが、縄張りを築き、強いものが弱いものを捕食して暮らしていた。
祖国を追われたマガンダラは、放浪の末に辿り着いた土地で、滅ぼしたはずの“人間”たちによる恐ろしい計画を知らされる。それは惑星の運命を揺るがしかねない壮大かつ恐ろしい企みだった。マガンダラは異種族の道連れとともに、祖国への潜入を試みる。『皆勤の徒』の著者、初長編。

高山羽根子『暗闇にレンズ』(春刊行予定)
わたしたちは毎日、町のあらゆるところに設置された監視カメラに日常を記録され続けている。人々はそうすることで身の安全を保障されているのだ。でも、わたしたちはそれだけじゃない。わたしたちは、わたしたちにレンズを向けるすべてのものに、同じようにレンズを向けつづけるのだ――撮ること、撮られること、記録すること。『うどん キツネつきの』でデビューし、SF界からも文芸界からも注目を浴びる高山羽根子、渾身の書き下ろし長編。

門田 充宏『追憶の杜』(春刊行予定)
若い女性が記憶データのレコーディング中に殺害される事件が起きた。現場に残された血塗れの再生プレイヤーの中に記憶データは見つからず、外部記憶メディアは何者かによって抜き去られていた。事件はセンセーショナルに報道され、〈九龍〉は直接の関係がないにもかかわらず、記憶データの汎用化技術を生みだしたことで非難と疑いの目が集中するようになっていた。珊瑚は根拠のないバッシングに対応すべく、インタープリタの代表としてメディアの取材を受けることになるが……。デビュー作『風牙』に連なる中編集。

秋田禎信『ノーマンズ・ソサエティー』(夏~秋刊行予定)
記憶をリセットする技術が発達し、不都合があればすぐに以前の人格と記憶を捨て、新たな人間に生まれ変わることが常識となった、近未来の社会。なぜか何回リセットしても、お互いに関する記憶を夢で思い出してしまう少年《スコップ》と彼が恋する少女《小声》は、廃棄処置される直前、街の外から来た男・レールローダーの手引きで脱出する。しかし、ふたりに追っ手がかかる。なぜ、廃棄される子供にすぎないのに命を狙われるのか?彼らが見る夢の意味とは? 《魔術士オーフェン》の著者が描く、SF長編。

久永実木彦『七十四秒の旋律と孤独』(秋~冬刊行予定)
〈空間めくり〉と呼ばれる時空転移技術が開発され、宇宙交易が活発になった未来。宇宙貨物船に搭載された人型戦闘兵器の紅葉は、航行中の襲撃に備えて船を警護する任務を負っている。しかし過去一度も襲撃を受けたことのない船の乗組員たちからは“空焚きのポット”と揶揄され、存在を無視されていた。だがあるとき、ついに貨物船が海賊に襲われ……。第8回創元SF短編賞受賞作収録。鮮烈なビジョンと端正な筆致で高い評価を受ける著者のデビュー作品集。


単行本・創元SF文庫の注目作

アンソロジー『Genesis 2019』(四六判並製)
2018年12月、新しい書き下ろしSFアンソロジーシリーズとして産声を上げた《Genesis》
2019年版でも本格SFからストレンジ・フィクションまで、幅広いSFの可能性を追求する。

N・K・ジェミシン『第五の季節』
The Fifth Season (2015) by N. K. Jemisin/小野田和子 訳(創元SF文庫、夏~秋刊行)
遠未来。数百年ごとに「第五の季節」と呼ばれる破局的な大災害が発生し、文明を滅ぼす歴史を繰り返してきた超大陸スティルネス。新たな「第五の季節」の到来を目前にしたこの世界には、地殻変動を抑える特殊能力を持つゆえに虐げられる「ロガ」と呼ばれる人々がいた――前人未踏、三年連続で三部作すべてがヒューゴー賞長編部門受賞の傑作、ついに邦訳!

ピーター・ワッツ『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』
The Island and Other Stories (1994-2014) by Peter Watts/嶋田洋一 訳(創元SF文庫、3月刊)
赤色巨星を巡る想像を絶する生態の生命体との邂逅を描くヒューゴー賞受賞中編「島」、シャーリイ・ジャクスン賞受賞の驚愕の一人称短編「遊星からの物体Xの回想」、戦争犯罪低減のため実験的に“意識”を与えられた軍用ドローンの進化の果てを描く「天使」など、傑作11編を厳選。『ブラインドサイト』で星雲賞長編部門を受賞した著者の真骨頂を示す、日本オリジナル短編集。

シルヴァン・ヌーヴェル『巨神降臨』
Only Human (2018) by Sylvain Neuvel/佐田千織 訳(創元SF文庫、5月刊)
全世界で1億人の犠牲者を出した戦いから9年。アメリカは地球にただ一体残された巨大ロボット・ラペトゥスを修復利用し、他国を蹂躙していた。そんな状況下、姿を消していたテーミスとヴィンセントたちがついに地球に帰還する。いち早くテーミスを手中に収めたロシアは、彼らの利用を目論む。地球の命運を背負った二体のロボットの行く末は……。星雲賞受賞『巨神計画』『巨神覚醒』に続く三部作完結編!

ユーン・ハ・リー『ナインフォックス・ギャンビット』
Ninefox Gambit (2016) by Yoon Ha Lee/赤尾秀子 訳(創元SF文庫、秋~冬刊行)
数学と暦に基づく超技術を駆使し、専制支配体制を布く特異な星間国家〈六連合〉。この国の若き女性軍人にして数学の天才チェリスは、史上最悪の反逆者にして伝説の戦術家ジェダオの精神をその身に憑依させ、艦隊を率いて巨大宇宙要塞都市の攻略に向かう。だがその裏には専制国家の秘密が……。2017年ローカス賞第一長編部門受賞、ヒューゴー賞・ネビュラ賞長編部門候補作の、新鋭が放つ本格宇宙SF。

ベッキー・チェンバーズ『怒れる小さき星への長い航海』
The Long Way to a Small, Angry Planet (2015) by Becky Chambers/細美遙子 訳(創元SF文庫、夏刊行)
遠未来、地球を失った人類はエイリアン種族に救われ、弱小種族として〈銀河コモンズ〉に名を連ねていた。ローズマリーが身元を偽って乗り組んだオンボロのワームホール掘削船〈ウェイフェアラー〉は、一攫千金の大仕事を得て、多種族混成クルーで銀河中心部への長く危険な航海に出る……個人出版からクラーク賞候補にまでなった大人気スペースオペラ登場!


単行本・創元推理文庫(F)のファンタジイ注目作

乾石智子《紐結びの魔道師》完結編!『青炎の剣士』(四六判仮フランス装、1月刊)
束の間の平穏は春の訪れとともに去り、リクエンシスたちが身を寄せたオルン村は、元コンスル帝国軍人ライディネス率いる軍が押し寄せてきた。リクエンシスとトゥーラは、エンスを追ってきた邪悪な化物に立ち向かうべく〈死者の谷〉に降り、戦線を離脱。エミラーダはある目的を胸にライディネス軍に寝返る。だが、事態はエミラーダの思惑を超えてとんでもない方向に動き出していた。リクエンシスと仲間たちは事態を収拾し、魔女国の呪いを解くことができるのか。『赤銅の魔女』『白銀の巫女』と続いた《紐結びの魔道師》三部作ここに完結!

フランシス・ハーディング『カッコーの歌』
Cuckoo Song (2014) by Frances Hardinge/児玉敦子 訳(四六判上製、1月刊)
「あと七日」意識を取りもどしたとき、耳もとで言葉が聞こえた。 わたしはトリス、池に落ちて記憶を失ったらしい。少しずつ思い出す。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、憎んでいる、そしてわたしが偽者だと言う。なにかがおかしい。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、甦る恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」……わたしに何が起きているの? 『嘘の木』の著者が放つ傑作ファンタジー。英国幻想文学大賞受賞、カーネギー賞最終候補作。

廣嶋玲子『妖怪奉行所の多忙な毎日』(創元推理文庫、1月刊)
妖怪奉行所は、日夜様々な妖怪がやってきては、助けを求める場所。烏天狗一族が与力、同心から牢番までの一切を代々務めている。飛黒はそんな烏天狗の筆頭であり、奉行の月夜公の右腕だ。そんな飛黒が双子の息子右京と左京を連れてきた。双子も将来は奉行所でお役目につく身、今のうちに見学させておこうというわけだ。夫婦喧嘩の仲裁、淵の主の脱皮の手助けと、今日もてんてこ舞いの烏天狗達。だが、その陰で双子だけでなく、月夜公の甥の津弓、妖怪の子預かり屋の弥助を巻き込むとんでもない事件が静かに進行していた。大人気シリーズ第七弾。

鈴森琴『忘却城』(創元推理文庫、2月刊)
忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀琲王国。過去に負った心と身体の深い傷をその身に抱えた青年儒艮は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない、盲獄と呼ばれる牢で目を覚ます。そこに集められたのは、儒艮の他五人。彼らを集めたのは死霊術師の長である、名付け師と名乗る男だった。儒艮は死霊術の祭典、幽冥祭で事件が起きると予測、彼らはそれ阻止すべく動き出す。名付け師をめぐる陰謀の全貌は? 第3回創元ファンタジイ新人賞佳作選出作。

ショーニン・マグワイア『砂糖の空から落ちてきた少女』
Beneath the Sugar Sky (2016) by Seanan McGuire/原島文世 訳(創元推理文庫、3月刊)
ウサギ穴に落ちたり、鏡をくぐり抜けたりして異世界で冒険をしたのち、現実世界に戻ってきたきたものの、現実に適応できない子供たち。そんな子供たちに救いの手をさしのべる“エリノア・ウェストの迷える青少年のための学校”の池に、空から少女が降ってきた。彼女は、かつてこの学校にいたスミの娘だという。だが、スミは死んだはず。それを聞いた少女はスミを取りもどさないと自分が消えてしまうと訴えた。そこでスミの友だち4人がスミを取りもどすべく死者の世界に旅立つことに……。ファンタジーの醍醐味を凝縮した、『不思議の国の少女たち』でヒューゴー、ネビュラ、ローカス賞を受賞した三部作完結。

ソフィア・サマター『翼ある歴史 図書館島異聞』
The Winged Histories (2016) by Sofia Samatar/市田泉 訳(四六判上製、4月刊)
帝国オロンドリアを二分した、言語をめぐる大乱。書き記された〈文字〉の力を奉じる人々と、語り伝える〈声〉の力を信じる人々の戦いは、いかなる結末を迎えたのか。剣の乙女タヴィス、〈石の司祭〉の娘ティアロン、遊牧民フェレドハイの歌い手セレン、王家の子女シスキ……戦乱に身を投じた四人の女性が紡ぐ歴史。デビュー長編にして世界幻想文学大賞など4冠『図書館島』の姉妹編、ついに邦訳。

鴇澤亜妃子『飢え渇く神の地』(創元推理文庫、4月刊)
死の神ダリヤが支配する西の沙漠。遺跡の地図を作ることを生業とする青年カザムは、探索を終えて落胆しながら帰宅した。十年以上前、遺跡の調査に行くと言い残したまま、西の沙漠に消えた家族の行方を探し続けているのだ。もう見つからないのかもしれない。そんなある日、レオンという青年が、カザムを道案内に雇いたいといってきた。宝石商だというのだが、治安警察に追われているらしい。カザムは渋々引き受けるが……。沙漠の砦に住む謎の教団、願いを叶えてくれる豊穣の女神の心臓石。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞の著者が贈る意欲作。

白鷺あおい『首長竜の秘密 ぬばたまおろち、しらたまおろち』(創元推理文庫、5月刊)
ディアーヌ学院、夏。三船先生の妹が突然スコットランドからやってきたりと、不測の事態はあったものの、夏至祭も大成功に終わり、あとは楽しい夏休み……のはずだったが、休みを目前に、気になる噂が彩綾乃の耳に入る。群馬県の山奥にある五郎丸湖で、ネッシーに似た謎の生物が目撃されているというのだ。忘れもしない二年前の夏、故郷の角田村で綾乃を襲った首長竜、あれは確かにアロウが殺したはずだ。そんなとき、綾乃たちは五郎丸温泉にある別荘に招待される。妖怪と人間が共に学ぶ魔女学校を舞台にした、人気の学園ファンタジイ第三弾。

雪乃紗衣『Mystic――ミスティック――』(四六判)
田舎町に住む小学生の拓人は、母の入院のため夏休みをひとりで過ごすことになった。ある日、拓人は自分のことを調べてまわっているらしい青年の存在を耳にする。怪訝に思う間もなく、霊感ゼロのはずの拓人は、学校で幽霊を目撃した。いったい何が起こっているのか? 不安にかられた矢先、今度は見知らぬ女性が拓人の前に現われた。その女性は拓人とは数年ぶりの再会だと言ったが、拓人のほうは彼女に関する記憶を失っていた……。《彩雲国物語》の著者が贈る、少年の冒険譚。



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