こんにちは、営業部のFです。
あっという間に年末です。早いものです。振り返ってみると、この営業部日誌は2年も続いているのですね。ちょっと気になって、営業部日誌の1回目を読み返してみました。出版社営業のお仕事がどんなものなのかお伝えします! とか書かれていますよ(笑)。まあ、それを書いたの、私ですけどね。さらに読み返すと結構な割合で本業と関係のないことが書かれている気がします。
というわけで、今回は真面目にやります! 以前私は店頭販促用POPの製作について書かせていただきました。今回も同系統のお話、書籍を販促する上で最も欠かせない拡材、ずばり「帯」について、営業部の仕事をご紹介しますね。
まず、帯とは。書籍に巻かれている紙のことです。宣伝を目的として、内容紹介や推薦文などが記載されています。……って知っていますよねー。
基本的に東京創元社では、帯の製作はまず編集者が担当しています。新刊時に巻かれている帯は、私の知る範囲ではほぼ例外なく担当編集者が文言を考えています。では、営業部が帯を担当するときはどんな時か。それは、例えばテレビで紹介されたとか、ランキングに載ったとか、要は今こそ売り伸ばしのチャンス! という時です。では、早速私が帯製作を担当した作品を振り返ってみましょう。
今回私が担当した帯替え商品は、年末のミステリランキングを総なめにした傑作ミステリ、アンソニー・ホロヴィッツ著の『カササギ殺人事件』です。9月に刊行して以来、書評、クチコミで大きな話題となり、年末のミステリランキングでは全て1位という快挙を成し遂げた作品です。そんな怪物的な作品の帯替え……、責任重大です。
まずは何を載せるか。そこから考えていきます。
今回は載せるべき要素がたくさんありますので、文言に悩むことはなさそうです(たまにただ売り出すぞ! というパターンがあるので、その時のほうが生みの苦しみを味わいます)。「1位」と「4冠」、そして「各年末ランキング情報」を載せたらほぼスペースはなくなります。
じゃあ作ってみようかと思いましたが、一つ問題が。
なんというビビットな色味のカバー。ちょっと行き詰まります。実は帯製作をする上で、ちょっとしたセオリーのようなものがあるのです。それは、
- 印象を変えることを目的としているため、前の帯と同じ色味にしない
- 上下巻の場合、統一感を出すために同じ帯を付ける
この2点です。
今回のような多面で展開される可能性が高い作品は特に2つ目の要素が重要です。しかしこれだけ原色のカバーイラストですと、同じ色味の帯にした場合、どちらか片方の帯が映えなくなってしまう可能性があります(例えば上巻に合わせて緑色の帯を作った場合、下巻は上巻ほどのインパクトにはならないとか)。
どうしましょうか。しばらく悩んで、私は決めました。セオリーを無視しよう!
前と同じように黒をベースに上下巻別々の帯を作っちゃおう! 上記2つのセオリーを完全に無視して製作を始めました。
同じ黒ベースの帯でも少し印象が違うのではないでしょうか。
さあ、部内で回覧です。「POPを作ろう」のときと同じように、営業部員7人の審査を待ちます。
見えるでしょうか。帯の上のほうにちらほら書いてある忌憚ない意見が(そのまま載せると恥ずかしさの余り発熱するのでぼかしています)。この意見を取捨選択してまた作り変えます。そうして何度か回覧した後に出来た、完成形がこちらです。
見ようによってはあまり変わってないかもしれませんが、ちょっとしたことでも売行きというものは大きく異なります。少しでも手に取った方に伝わるよう、部内一丸となって試行錯誤しているのです。
ちなみに多分部内でも気づかれていないと思いますが、新帯のベースとなっている黒色、ちょっと革製品っぽくしています。その方が高級感出ちゃうかなと思った、私のこだわりポイントです。
新帯Ver.の『カササギ殺人事件』はようやく店頭に並び始めたばかり。少し模様替えをした『カササギ殺人事件』が皆さまに受け入れていただけたらとても嬉しいです。
ちなみにここ1年で営業部が製作した帯は、『今だけのあの子』『ヴェサリウスの柩』『ななつのこ』『夜の床屋』『ニャン氏の事件簿』『そしてミランダを殺す』『真実の10メートル手前』『アリス殺し』などなど。よくよく見てみると編集と営業で作り方の違いが見えてくるかもしれません。今度書店さんに足を運ぶ際は、その辺りも見てみると楽しいかもしれませんよ。
それではまた次回!