皆さんは、迷子の子供を助けた経験はありますか? 私は子供の頃、デパート内で迷い、書店員さんに親のいるところまで連れて行ってもらったという、「助けられた」経験ならあります。あの時の店員さん、本当にありがとうございました。


もし、助けた迷子が謎に包まれていたら? もし、迷子を保護者の元に送り届けようとして、とんでもない事態に巻き込まれたら? 本書『一週間のしごと』は、そんな目に遭った高校生たちの波瀾に満ちた一週間を描いたミステリです。

主人公のひとりは、優等生だけれどほかに取り立てて特徴のない、高校生の恭平。彼はある日曜日、直情的でお節介な幼なじみの菜加(もうひとりの主人公)に呼びつけられ、一方的に相談されます。
何でも拾ってしまう癖のある菜加が、昨日渋谷の雑踏で母親から置き去りにされた、小さな男の子を連れてきてしまったのです。なぜか自分の名前すら言おうとしない男の子を、恭平たちは僅かな手掛かりを元に、警察や親の手を借りず、然るべき場所に送り届けようとしますが……。

あらすじだけを見て「ただ無口な迷子を送り届けるだけでは?」と思っている読者の皆さんは、とりあえず本書の50ページまでお読みください。『日常の謎』のような穏やかなシーンから一転し、衝撃の事実が明かされます。
そこからは、怒濤の展開で進みます。謎の迷子をめぐり、ただの高校生である恭平と菜加は、無事に事態を解決することができるのか? 少年少女の奮闘を、疾走感あふれる筆致で描かれています。

恭平たちを待ち受けるのは、果たしてどんな結末か? スリルに満ちた彼らの「一週間のしごと」を、ぜひご覧ください。