放課後が好きです、いや正確には好きでした。
 まあ、ほとんどの学生経験者は授業中よりも放課後が好きだったと思います。
 緊張感(と眠気)のあった授業中とはうって変わって、部活動や課外活動にエネルギーを発散させるようなその空気感は、もう自分自身だいぶ失ってしまったかもしれません。 
 さて、
『放課後探偵団』
『放課後スプリング・トレイン』
『お人好しの放課後』
『お節介な放課後』

 ずらりと並んだ、創元推理文庫の放課後タイトル!
 放課後好きとしては、たまりません。


 そこに、新たに加えさせていただくのは、市川哲也さんの『放課後の名探偵』です。 前作『屋上の名探偵』を刊行後に、第二巻の話をしていた時には、すでに心の中では『放課後の名探偵』のタイトルを、市川さんにご提案するつもりでした。そもそも、学園ミステリにおいて、授業中は学業があるわけですから、いろいろなトラブルが発生するのは休み時間か放課後しかないのですけれどね。
 
 第一巻に続いて、名探偵の素質を隠したまま学園生活を送っている蜜柑花子と、彼女をサポートする中葉悠介。それは三年生になったいまも変化はなく、中葉は蜜柑の影の推理のおかげで“リアル名探偵”の異名を轟かせています。
 今回は少し趣向が変わっていて、全四編とも語り手は蜜柑や中葉ではありません。それぞれのトラブルの主視点ですから、倒叙ミステリになりますね。いきいきとした市川さんの文体と、犯人(?)たちの若いが故の失敗が、読んでいて堪らない気持ちになってきます。

 ぜひ、放課後の読書活動に本書を加えていただければ幸いです。