年老いた元メイドが語る、貴族の館で起きた悲劇的な事件の物語『リヴァトン館』でミステリ・ファンにもその存在をアピールしたオーストラリアの作家ケイト・モートンKate Morton。彼女の、第一作をはるかにしのぐ傑作『忘れられた花園(仮)』The Forgotten Garden が来年2月に登場します。
 ひとりの女性の出自をめぐる謎の物語、と言ってしまえば簡単なのですが、一筋縄でいかない読み応えのある、ミステリアスな物語です。

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 1913年オーストラリアの港に着いたロンドンからの船。すべての乗客が去った後、小さなトランクとともに港に取り残されていた一人の少女。トランクの中には、お伽噺の本が一冊。
 名前すら語らぬ身元不明のこの少女をオーストラリア人の夫婦が引き取り、自分の娘としてネルと名付け育てあげる。そして21歳の誕生日に、彼女にその事実を告げた。
 ネルは、その日から過去の虜となる……。
 時は移り、2005年、オーストラリア、ブリスベンで年老いたネルを看取った孫娘、カサンドラは、ネルが自分にイギリス、コーンウォールにあるコテージを遺していたという思いも寄らぬ事実を知らされる。
 なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか? ネルとは誰だったのか?
 閉ざされ忘れられた花園のある崖の上のコテージはカサンドラに何を語るのか?
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 謎に満ちた物語をどうぞお楽しみに。

ケイト・モートン『忘れられた花園(仮)』上下
青木純子訳 四六判並製
 

(2010年11月5日)

 

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