欧米の短編ミステリの翻訳を読む人が、必ずぶつかる言葉で、曖昧だけれど便利な言葉、あるいは、曖昧だから便利な言葉が、ふたつあります。「奇妙な味」と「異色作家短篇集」あるいは単に「異色作家」です。
前者は江戸川乱歩の造語で、『幻影城』
乱歩の造語「奇妙な味」は、短編ミステリに、謎とその解明やそれに付随したトリックといったもの以外の点に価値を見出した、日本における、ごく初期の例と言えるでしょう。まず、乱歩が「奇妙な味」という概念を持ち出すに到るまでを整理しておきます。
エラリー・クイーンの『黄金の十二』
(A)謎の構成に重きを置く場合
E・A・ポオ「モルグ街の殺人」
A・C・ドイル「唇のねじれた男」
R・A・フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」
A・モリソン「レントン館盗難事件」
E・ブラマ「ブルックベンド荘の惨劇」
M・D・ポースト「ズームドルフ事件」
G・K・チェスタトン「見えない男」
J・フットレル「十三号独房の問題」
ジェプスン&ユーステス「茶の葉」
R・ノックス「密室の行者」
(B)奇妙な味に重きを置く場合
E・A・ポオ「盗まれた手紙」
R・バー「放心家組合」
A・C・ドイル「赤髪連盟」
G・K・チェスタトン「奇妙な足音」
ロード・ダンセイニ「二壜のソース」
H・ウォルポール「銀の仮面」
T・バーク「オッターモール氏の手」
A・クリスティ「夜鶯荘」
A・バークリー「偶然の審判」
C・ウールリッチ(アイリッシュ)「爪」




