『秘密(仮題)』 上下
ケイト・モートン 青木純子訳


 第3回翻訳ミステリ大賞受賞、 第3回 AXNミステリー「闘うベストテン」第1位の『忘れられた花園』をお読みになった皆様、ケイト・モートンの第二弾を、ついに年末にお届けします!

 今回はあの秘密めいたお屋敷や、迷路の庭園といった舞台ではありませんが、1940年代、60年代、そして2011年と、時代を超えた大きな謎再びです。
緻密な構成、圧倒的な筆力で、モートンの世界に引きずり込まれ、魅了され翻弄されること間違いなしです。

 2011年ロンドン、ローレルはイギリスを代表する個性派女優として活躍している。その演技力は誰もが認めるところで、皺の一本一本も魅力のうちと言われるほどの名優だった。
 彼女の老いた母親に死が近づいている今、ローレルには、どうしても確かめたいことがあった。
 少女時代に彼女は、母親が人を殺すのを目撃したのだった。
 突然現われた男を包丁で刺した母。男は近所で頻発していた強盗事件の犯人だったと判明、母は正当防衛ということで罪には問われなかった。
 しかしあの時、謎の男は、母の名前を知っていたのだ。警察には話さなかったが、男は「やあ、ドロシー、ひさしぶりだね」と小さな弟を抱いた母に向かって言ったのだった。
 いったい彼は何者だったのか?
 長い間記憶の底に閉じこめていた、この疑問の答を彼女は求めていた。
 病床の母の枕元にあった『ピーターパン』の本の間から出てきた写真。そこに母と二人で写っている女性は誰なのか? 
 ローレルは、母の秘密を探り始める。

 名女優ローレル、第一次世界大戦中メイドとしてロンドンの大きなお屋敷(お屋敷がありました!)で働いていた母ドロシー、少女時代のドロシー、謎の男、初めて見る古い写真……。
 今はこんなことだけ、お話ししておきましょう。
 今回も青木純子さんの名訳が光ります。 どうぞお楽しみに……。

(2013年10月7日)




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