山羊の頭が付けられた人の胴体(トルソ)。
羊の死骸。ラテン語の格言と寓意画……
犯人が残した数々のメッセージ。

消滅した国の刑事
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 2003年12月、ベルリンで女性の凍った胴体(トルソ)が発見される。遺体の頭部は山羊の頭につけかえられていた。ツォランガー警視正が捜査に乗りだすが、まもなく、今度はナイトクラブで異様な羊の死骸が見つかる。そして彼の前に兄の死の真相を調べている女性が現われ……。複雑に絡み合う登場人物たちの思惑と、二転三転する事件。ドイツの実力派ミステリ作家が突きつける驚愕の結末とは?

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 つぎつぎに発見される、人間と動物の遺体を組み合わせた不気味な胴体(トルソ)。一見凄惨な死体損壊に思えますが、すべてに意味があります。緻密かつ重厚な読みごたえのある作風ですが、とても読みやすく、ページをめくる手が止められなくなるはずです。

 また、本書はドイツ再統一から13年を経たベルリンが舞台となっています。物語の背景には東西ドイツの統一があり、主人公のツォランガー警視正は旧東独出身の刑事で、統一後の世間に馴染めぬまま、葛藤や苦悩を抱え続けています。ミステリとしてのおもしろさに加え、心理描写が巧みな点も魅力になっています。

 著者は1961年ドイツ南部生まれの男性作家。高校在学中にアメリカ留学、さらに大学に入る前にはスペインに語学留学し、帰国後、大学では英米文学、歴史、ドイツ学、南北アメリカ学、比較文化など幅広い分野を学んでいます。その後、ふたたびアメリカ留学、フランス留学を経て、1992年、ベルギーのブリュッセルEU代表部の通訳となります。仕事のかたわら執筆活動をはじめ、1996年に美術史をからめたミステリで作家デビューします。2000年、2作目に発表した歴史ミステリでドイツミステリ大賞第3位に輝きました。綿密な取材に基づいて執筆するのが信条の、ドイツを代表する実力派ミステリ作家です。

『消滅した国の刑事』は、6月21日ごろ発売です! どうぞお楽しみください。

(2013年6月5日)




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