スルタンの皇女は婚礼の日を迎えようとしていた。
 皇女は、魔物と呼ばれる女童が弟に物語を語って聞かせた〈庭園〉で、結婚式をあげたいと望んだ。その日〈庭園〉は婚礼のごちそうと人々であふれ返った。宴のために着飾らされた童子は、女童のもとに逃げこみ、そして再び瞼に書かれた物語は始まる……。万華鏡のなかの世界。摩訶不思議な謎の宴。

「十二枚の硬貨の物語」「飢えた王の物語」「毒師の物語」「宦官とオダリスクの物語」「茶作りと靴作りの物語」「蜥蜴の教訓の物語」「硝子の王女の物語」「踊る娘たちが下りていった物語」……

 飽くことなく語られた魔物の物語のすべてが最後に収束し、ここに大団円を迎える。
 万華鏡のなかの世界。摩訶不思議な謎の宴。ミソピーイク賞受賞の超大作。
 人気イラストレーターMichael Wm. Kalutaの挿絵多数収録。



「わたしが読むことができた最初の話をしよう。左の瞼のしわに刻まれていたものを」

 スルタンの庭園にひとりの女童がいた。瞼と目のまわりが深い藍色、陶器の壺に入れたインクのような群青色をしていた。魔物の眷属なのか? スルタンも、その女童が魔物であるかどうか決めかね、庭園にひとり棲まわせておいた。

 そんな孤独な女童のもとに、スルタンの息子が近づいた。童子は女童に物語をねだり、女童は、瞼に書かれた物語を夜々語って聞かせるのだった……。


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(2013年1月8日/2013年6月5日)




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