ハリー・クバート事件 下
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ハリー・クバート事件 上
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 2012年に発売以来、全ヨーロッパで200万部以上のメガセラーとなった話題作、28歳のスイス人作家ジョエル・ディケールによる『ハリー・クバート事件』が、いよいよ今月末発売になります。

 本書は、金曜日から、あるいは、翌日夏休みを取ると決めてから、読み始められることをお勧め致します。読み始めたら最終ペーシまで一気読み間違いなし……という作品だからなのです。

 スイス人作家の作品ですが、舞台はアメリカ、ニューハンプシャー。
 タイトルにあるハリー・クバートとは、アメリカの国民的作家(代表作は『悪の起源』)の名前。彼の大学の教え子で、デビュー作で一躍ベストセラー作家となったものの二作目が書けずに苦しんでいるマーカス・ゴールドマンが、彼に悩みを打ち明け、ライターズ・ブロックを乗り切ろうとするところから、物語は始まります。

 一人暮らしのハリーの家で過ごすうちにマーカスは、たまたま、恩師が若かった頃ある少女と恋愛関係にあったことを知ってしまう。狼狽する恩師に秘密を守る約束をした彼は、ひと月以上をそこで過ごしたが、結局1行も書けないままニューヨークに戻る。
 その直後、驚くべきニュースが全米を揺るがした。
 大作家ハリー・クバートの家の庭から、33年前に失踪した少女の白骨死体が見つかったのだという。遺体のそばには『悪の起源』も埋められていた……。
 そしてハリー・クバートが逮捕された。
 無実を主張する彼を信じて、マーカスは自ら真相をさぐるべく、ふたたびニューハンプシャーへ。

 こうして物語が始まるのです。

 各章の扉に掲げられているのは、ハリーがかつてマーカスに語った小説作法。彼は師のために調べ上げた事実をもとに、『ハリー・クバート事件』という一冊をまとめ上げる。
 マーカスはハリーの無実を証明することができるのか? 事件の真相とは?
 そしてマーカスは、作家として立ち直ることができるのか?

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 フランスで2012年に刊行されて以来、ヨーロッパじゅうのの話題をさらった本作は、今年、5月の末にアメリカに上陸し、賛否両論を巻き起こしているようです。アメリカを舞台にしていること、いかにもヨーロッパ人の考えるアメリカ人を描いていること、そして、ヨーロッパでの評判からペンギン・ブックスが史上最高額で版権を獲得したらしいこと等々も相俟って、はじめから、叩いてやろうと手ぐすねひいて待ちかまえていた人々も多かったようです。
ジョエルディケール.jpg 「若い作家の成功を面白く思わない人は多い……。28歳のこの作家もまさにその一例になったようだ……、しかし、いいかげんに正直になろうではないか! やはりこれは、たいした作品だ」などという書評も出たり……。
 日本の読者は、どう思われるのでしょう? ご判断はおまかせします。
 複雑なプロット、どんでん返しにつぐどんでん返し、〈ページターナー〉の言葉を裏切らないことは保証致します。
 さあ、夏休みのご予定に『ハリー・クバート事件』の一気読みを加えてください。ぜひ早めに夏休みを申請なさってください!

(2014年7月7日)




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