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 ヘニング・マンケルといえば、現在の北欧ミステリ・ブームに先駆けて日本でも翻訳刊行され、根強い人気を誇る、まさに北欧ミステリの帝王ともいえる存在。スウェーデン南部の小さな町イースタを舞台に刑事クルト・ヴァランダーが事件を追う〈刑事ヴァランダー シリーズ〉は第一巻『殺人者の顔』がガラスの鍵賞を、第五巻の『目くらましの道』がCWAゴールドダガー賞を受賞し、まだイギリスBBCでケネス・ブラナー主演でドラマ化されています。
 そんな人気・実力を兼ね備えたマンケルの集大成ともいえる作品がこの『北京から来た男』。〈刑事ヴァランダー シリーズ〉ではありませんが、スウェーデンの片田舎にはじまり、世界的な広がりを見せるこの物語は、まさしくマンケルそのもの。彼の人生、創作のすべてが詰まっているといっても言い過ぎではありません。

 そんな桁外れのスケールの『北京から来た男』ですが、物語はスウェーデンの片田舎の静かな村で幕を開けます。

 2006年スウェーデンの中部ヘルシングランド地方の小さな谷間の村に足を踏み入れた写真家は、信じられない光景を目撃した。凍てつくような寒さ早朝、村のほぼ全ての家の住民が惨殺されていたのだ。スウェーデン犯罪史上最悪の犯罪。十軒の家、十九の死体。ほとんどが老人ばかりの過疎の村が、なぜ? 
 休暇中のヘルシングボリの女性裁判官ビルギッタは、亡くなった自分の母親が事件の村の出身であったことを知り、ひとり現場に向かう。
 亡くなった母が幼少時を過ごしていたという、殺人現場の家を訪れたビルギッタは、刑事の目を盗みタンスの中から数冊のノートを持ち出した。ノートに記されたネヴァダの文字が目に飛びこんできたからだ。
 それはスウェーデンの寒村で起きたのと似た血塗られた事件が起きた土地。手記はアメリカ大陸横断鉄道の建設にの現場監督だった男が、一八六〇年代に書いたものだった。
 貧しさにあえぐ十九世紀の中国の寒村、鉄道建設に沸く開拓時代のアメリカ、そして発展著しい現代の中国、アフリカ……。

 世界32か国で刊行。〈刑事ヴァランダー シリーズ〉で現代社会の問題を描き続けてきた著者による、ミステリを超えた金字塔的傑作、ついに刊行。


(2014年7月7日)




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