さまざまなお店で働く
書店員さんにお会いしましたが、
話題がこれになると
とたんに盛り上がます。
成風堂書店シリーズ第3弾
07年4月刊
『サイン会はいかが?』
大崎 梢


 杏子と多絵を主人公にした〈成風堂書店事件メモ〉のシリーズも、これで三冊目です。けっして筆が速いわけでも、アイディアが泉のようにわき出るのでもないのですが、書店を舞台にした短編としては、どうしてもやってみたいものがあったのです。

 取り寄せ──これについては、どの書店員さんにも、それこそ売るほどたくさんの悲喜こもごもがおありかと。『配達あかずきん』を出して以来、さまざまなお店で働く書店員さんにお会いしましたが、話題がこれになるととたんに盛り上がます。

 社会科見学の小学生──たまにいらっしゃいます。たまですが、インパクトはあります。町の本屋さんを好きになってほしいなと、心から思うこちらの感慨とは裏腹に、嵐のようにやってきて嵐のように去っていきます。

 付録──もしくは販促物。非常にたくさんの種類があるのですが、あれはいったい誰が考え、どういう狙いでつけてくるのでしょうか。知りたいです。あれも、これも。脳裏に次々浮かびます。その謎は作中、残念ながら解き明かされず……すみません。

 サイン会──書店のイベントとして真っ先に浮かびます。今回、迎える側の書店員さん、そして、いらっしゃる側の作家さん、編集者さん、営業さんと、お話を伺いました。皆さん、読者さんをとても大事にされている、それを深く実感いたしました。

 忘れもの──買ったばかりであろうケーキの箱というのも切ないですが、ぬいぐるみ、ミニカー、小さな帽子というのも胸が痛みます。会計した本を持ち忘れる、本を受け取り釣り銭を忘れる、買おうとしたら財布を忘れてきた。大丈夫、よくあることですもの。

 書いてみたい題材が五点。そして五本の短編ができました。

 「取り寄せトラップ」
 「君と語る永遠」
 「バイト金森くんの告白」
 「サイン会はいかが?」
 「ヤギさんの忘れもの」

 どうぞよろしくお願いいたします。

 お楽しみいただければ幸いです。

(2007年4月)

大崎 梢(おおさき・こずえ)
東京都生まれ。神奈川県在住。2006年5月、連作短編集『配達あかずきん』でデビュー。 本書店員ならではの目線と、優しい語り口、爽やかな読後感で注目を浴びる期待の新鋭。シリーズ第2作の長編『晩夏に捧ぐ』につづいて、最新刊『サイン会はいかが?』はふたたび連作短編集でお届けします。