潜入捜査を得意とする企業犯罪コンサルタントの、
潜入先で巻きこまれた事件をつづるデビュー連作短編集
(09年2月刊『最上階ペンタグラム』)
南園 律 ritsu MINAZONO
はじめまして。南園律と申します。
ルーキーですので、ひとつ自分語りとか、創作を始めたきっかけとか、ミステリ観だとか、そういったことを書かせていただくべきなのかもしれません。が。
いかんせんシャイなものですから、あとはこの二人に任せたいと思います。
それでは『最上階ペンタグラム』、お手にとっていただければ幸いです。
海坂:……で?
土田:で? うーむ。で、で……出番だ海坂!
海坂:しりとりじゃありませんよ! 何ですか、その「俺うまいこと言った」みたいな顔!
土田:そう怒鳴るな。何キリキリしとるんだ。
海坂:だって、丸投げですよ? 職場放棄ですよ!
土田:イラついてばかりだと、肌が荒れるぞ。
海坂:土田さんこそ、そのメタボ体型、どうにかしたほうがいいですよ。
土田:「多忙な人間には何事も十分に成し遂げることは不可能である」。つまりアレだ、おまえみたいに不出来な部下がいると尻拭いに忙しくて、ダイエットに励む暇もないんだ。
海坂:(またどっかの偉人の言葉を適当に振り回す……しかも人のせいにしてるし)
土田:だが確かに、この体型のせいで出番が減っても困るな。だいたいずるいぞ、おまえばっかり。毎度毎度、楽しそうに謎のイケメンと事件解決しやがって。
海坂:冗談じゃないですよ。私はただ巻き込まれてるだけで、非常に不本意なんです。
土田:しかしだ、仮にも犯罪コンサルタントのはしくれのくせに、助手役に甘んじるとは。上司として情けないぞ、俺は。
海坂:何言ってるんですか土田さん、ちゃんと読みました? どう見ても探偵役は私、助手役があの男でしょ。いえ、助手というよりむしろ、ただのオマケですね。
土田:……まあ、そこは、読者の方々のご判断に委ねよう。
海坂:望むところです。
土田:結果は、次のボーナスの査定に折りこむからな。せいぜい覚悟しとけ。
海坂:ええっ!?
■ 南園律(みなぞの・りつ)
覆面作家。第3回ミステリーズ!新人賞最終候補となった「最上階ペンタグラム」を大幅改稿、連作化し本書でデビューを飾る。抜群のリーダビリティと、上品なユーモアのある作風が期待の新鋭。