はじめまして、阿藤玲と申します。
『お人好しの放課後』は、御出町(おいでちょう)という架空の町に住む、のんきな高校生のゆるーい放課後のお話です。転勤族の家に生まれた私には、ふるさとと呼ぶべき町がないものですから、今まで住んできた町のことを思い出しながら、御出町を創りました。ポンコツな私の脳みそが、夢の中で歩いた町のことも混ぜてしまったせいか、時々ちょっと不思議なことが起こるようです。
 御出町は架空の町ですが、商店街にある古本屋だけはモデルが存在します。神戸の元町にある、探偵小説マニアの店主が経営している「うみねこ堂書林」です。許可を取ることなくモデルにしてしまったので、「勝手に書きました。ごめんなさい」とお詫びに行ったところ、なぜかレジ横にルナールの『にんじん』が積んでありました。
 え、なんで?(実は、その作品のことを『お人好しの放課後』にちらっと書いているのです)
 そうとは知らない店主も、なんで? という顔をしながら「だって、名作やろ」。
 不思議な縁を感じました。
 思えば、たくさんの縁に支えられて、今こうして「あとがき」を書いています。ありがたいことです。
 編集さんと校正の方には、本当に本当にお世話になりました。表紙の絵を描いてくださった456さん、デザインの折原さん、いろいろな部署で支えてくださった多くの方々に、心からの感謝を。
 そして、手に取ってくださる読者の皆さん。どうかご縁がありますように。

(2017年8月29日)



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